再び特殊メイクのこと/カーネーション


これまで殆どの登場人物に、加齢による外見の変化を施さないできた本作において、
今週から夏木糸子が80代になった時点で、まさかの(それも手間暇かかったのが一目でわかる
努力賞ものの)特殊メイクが登場したのには、
よくぞ夏木本人もスタッフも決断したものと舌を巻き、
その作品にかける本気度に感心したのだったが、

本日「アサイチ」出演の夏木マリによる、特殊メイクに関するトーク
(約2時間かかる特殊メイクのため)毎朝4時起きで取り組んだ、というのを聞いて、
やはりそうかと、その陰の努力と覚悟に、頭の下がる思いがした。

以前にも言及したが、かように特殊メイクとは時間のかかるシロモノで、
いくら実年齢には見えぬ若さとはいえ、59歳の夏木マリにして
毎日2時間は余分に費やさなくてはならない、となると
もしこれが30歳の尾野真千子なら、老いを土台から作らねばならない点を考慮すれば、
あるいは倍かかってもおかしくない、それくらい大変な作業だとの認識が
まず必要になるかと思う。

週6日放映する朝ドラで、毎日2時間早く仕事入りする夏木のハードさも、
体力と気力の限界ギリギリであるのは容易く想像がつくのに、
さらにそれ以上の無理をオノマチに要求する、という発想それ自体、
老年の演技ができる/できない以前の、
視聴者側の常識的判断、という節度の問題となるだろう。
(ちなみに何度も言うようだが、私個人は夏木糸子の選択は正しかったと思う一人だ。
特殊メイクの高い技術は認めた上で、ヒロイン交代を決めた作り手側の選択は支持する、
つまり、特殊メイクがお粗末だからヒロインを交代せざるをえなかった、とは
まったく思わないということ)

しかし夏木の覚悟も見上げたものだが、スタッフの頑張りもまた凄い。
予算も馬鹿にならないはずなのに、よくやっていると本当に感心する。

他の出演者、糸子の娘や孫たちなど顕著だが、外見の加齢が大胆に省略してあるのは、
これも以前述べたが、予算と時間がないからで、もし映画並みの予算と時間を注ぎ込めるなら、
きっとスタッフは存分にその能力、実力を発揮したに違いないのに、そこはプロ、
与えられた条件でベストを尽くしている現状に、
どうして非現実的でしかない、無茶な要求などできようか。
それはあまりにアンフェアというものだろう。


さて、泣いても笑っても残り僅か(実質7日間になるのか)となったカーネーション
大事に最後まで応援していきたい。

本日放映分(144/奇跡)も、これまた珠玉の出来で、
驚くほどの深い内容に胸打たれた。本当に素晴らしい、のひと言。
本作は私の朝ドラに対する認識を根本から変えて(改めさせて)しまった。
後々まで多くの人の記憶に残る傑作ドラマなのは間違いない。





.