秋の連ドラ、一押しは『QP(キューピー)』!






※朝ドラ『カーネーション』は別扱いで。

秋スタートのTVの連続ドラマの中で、飛び抜けて高水準な仕上がりで初回放映時に少なからぬ衝撃を与え、しかも初回限定の一発屋なハッタリに終わらず、二話目も映画も顔負けな水準をキープしてきた「QP(キューピー)」に、ただいま激ハマリ中。
監督が三池崇史、脚本がNAKA雅MURAとくれば、特撮文脈的にはウルトラマンマックス第16話「わたしはだあれ?」の悪ノリに次ぐ悪ノリのおふざけ三昧が懐かしく思い出されるが、本作では同コンビの別の面である暴力(ヤクザのシマを巡る抗争とか)背景での傷だらけの青春やるみたいで、今後の展開に大いに期待している。

TVドラマへの根強い固定観念を気持ち良くぶっ飛ばす充実の(三池監督の全力投球ぶりが素晴らしい)映像を一目見たら、もはや他の「無難に安定した」ドラマなんぞ受けつけなくなる破壊力が頼もしい限りだ。
そこはTVドラマに限らずで、可能性をここまでとか早急に決めつけてはいけないということだね、もっとやれるもっとあたらしいこと、もっと見るものを驚かすことも惹きつけることも心を動かすことも、志さえ忘れなければ、諦めて手放さなければ。
そんな挑戦し続ける野心と活気あふれるイキのいい映像のTVドラマが、本作に刺激されて連鎖反応的に出てくると面白いなと思う。『ハゲタカ』ショック再び、でなくて何度でも、既存の壁を打ち破って新たな一撃を、失敗をおそれ挑戦を放棄したヌルい奴らにガツンと喰らわせてやればいいのだ。

第一話のアバンからそのままOPに移行しレニー・クラヴィッツが流れるタイミングが、決まりすぎるほど決まってた、あれで完全もってかれた、レニーかっけー!とミーハーの血がざわめいた瞬間だ。
ハッタリ効かせるだけ効かせて、お客をぐいぐいひっぱならきゃならん勝負どこの掴みが巧い。気持ちよく乗せられ、作品世界へすっと入っていける道案内役が劇中流れる音楽の仕事だとしたら、レニーは言うことなし、ぴたりと嵌っていた。

ミーハーついでに、主演の斎藤工が初回ならず二話目も大胆な脱ぎっぷりを披露、背中の刺青をこれでもかと見せるのも、半端じゃない意欲と役者魂あればこそかと(恥ずかしくなど断じてない!ないったらない!ええい女々しい羞恥など捨ててしまえ俺!と念じ続ける姿を幻視)、それとシャワーシーンは毎回ついてくるサービスなのかね監督。
誰向けというなら直には女性全般、加えて腐女子の皆さんの需要も期待できそう(今んとこ女っ気ゼロときてる←まあ地味っちゃ地味よ)だし、内容は硬派で同性受けしそうな(表向きは)作りも含め、全方位狙い可能ということで美味しいかも。
元は流れもんの成り上がり組長、我妻涼の無口な(というかかつて喉に銃弾うけて声を失った)クールに徹した役柄が、なかなかどうして堂に入ってる斎藤工、白のトレンチコート羽織る出で立ちだけでなく、どうだとばかりの潔い脱ぎっぷりも見どころ(にしたいらしい監督、が女子受け要素に目をつける着眼点は間違いじゃないと思うぞ、予想外のヒットとなったタイバニこと『Tiger&Bunny』も、女子受け要素テンコ盛りだったのが要因としてデカイはず、女子人気は今や軽視できない決め手だろうからヒットの)

横溝組の若頭役に椎名桔平、のキャスティングは、思うに映画『アウトレイジ』での好演がきっかけなんじゃないかと予測してみる。

ところでチーフPと音楽は松嶋菜々子主演の『家政婦のミタ』と同じ布陣らしいが(同局作品なのもあるだろうが)、出来は遥かに『QP』の方が上(越えられない壁が幾つもある感じ)にもかかわらず、前者が初回視聴率19パー越えで、後者が2パー未満は、放映時間帯を考慮してなお、極端に差が開きすぎているのに、TVドラマ視聴者の見る目に対して失望を禁じ得ない。
ただ録画分は視聴率に寄与しないなら正しい結果とは看做せないわけで、となると現代人の生活習慣に合致しない制度はさっさと変革すべき、もはや今となっては何の当てにもならない適当過ぎる基準しか示せない視聴率なんぞ廃止するか大胆に改革するか、2つに1つしかなかろうと思うが、まあそれは置くとして、『家政婦のミタ』初回は一応観たが激しくつまらんかったぞ菜々子以外は。菜々子目当てに観てもいいけど、脚本も演出も役者も揃ってお粗末ぶりが痛すぎてちゃぶ台ひっくり返したくなる残念さを如何にせん。菜々子はいいんだけどなあ菜々子「だけ」は、と勿体ないやら歯痒いやら。

そうそう悪ノリなら『牙狼』第二話は外せない。なんといっても伊藤慎SAが素で登場し(スケボーの「若者」役はさすがにどうかと、普通にジョギング途中の男とか実年齢相応の設定でも良かったんでは・・)、広田レオナ演じる一貝志乃に捕獲され、隠れ家っぽい場所で吊るされるわ、背中の傷口をステープラーで留め留めされるわ、の拷問に苦悶するなどのサービスショットがもれなくついてくる、のであった。
だが注目度がほぼスーツonlyな人間にとっては、もしこれがカリスや響鬼の姿だったなら、と想像して初めて、おっなんか凄いかも、などと遅れて盛り上がる始末。放映時には伊藤SAと気づいた途端、なんて美味しいネタ提供かと冷静に感心したりなど。
そこはスーツ偏愛者たるもの、当然スーツ一筋なのでございますトモロヲ(はQPで好演してる、二話で写真にまでガンつけるのに笑った)。

初回の雨宮監督のは多用されるセット撮りが露骨でちゃちに見えて今後が不安だったが、二話目の横山監督ので少し安心。ところでwiki情報の邪美のやすえちゃん出るってホントすか、ホントなら非常に嬉しいんですが。

他にもいよいよ伊藤英明高島礼子の行き詰まる攻防戦が盛り上がる『ラストマネー』やら、やたら金かかってそうなアメコミヒーローもの『ザ・ケープ』やら、単発含めて色々と。『神様の女房』は次で終わるか。常盤貴子は陰ながら支える役がよく似合うことよ。