見えない大三角/QP(キューピー)第3話






第3話『サマートライアングル』

◇冒頭、初っ端から元(林遣都)による、我妻亮のフィギュア発見!だの、トムジェリも揃った天狼会シリーズのフィギュアを絶対コンプしねーと!だの、兄貴分のヒコさん(田口トモロヲ)巻き込んでの素っ頓狂な騒動が起きる、ちょっと変化球投げてみました的サービス精神溢れるノリが、前半の舞台となる桜町(ってこの字で合ってるか分からんが)商店街のあけすけな下町独特のノリに引き継がれるわけか、巧いね。映像だけでなく脚本にも「本気」を感じる。
展開的には地味ながら味わい深さは格別な今回。この余韻を楽しむ余裕は子どもには無理かも。ということで前言撤回、ストレートに女子供ウケな内容を期待しない方がいいかも。まあ個人的にはトモロヲや桔平のおっさん祭りでも一向に構わんのだけど。

◇相変わらずまったく手を抜く素振りを見せない三池崇史監督の映像美。元が子供の頃の忘れ難い兄との思い出を回想するシーンで、寂れた漁港の夕日色に染まるテトラポットだの、金色の鱗となってきらめく鏡面みたいに凪いだ海だのをバックに、自転車に二人乗りで「ラーメンを食いにいこうぜ!」と、風切って堤防を走らせる兄弟の姿(それもなけなしの兄ちゃんの金で←任せとけ!とばかり満面笑顔の兄、中坊くらいか、の頼もしさよ)良かったな。大三兄の役の子に、顔立ちの雰囲気が似てる子をさりげに選ぶ配役担当もいい仕事してる。
だが何をおいても、黒をしっかり効かせて映画並みの「闇」を再現しようとする志の高さが嬉しいのだった。TVドラマでもここまで出来ると堂々示してくれたのに胸のすく思いがする。既成概念をサクサクぶっ壊すチャレンジ精神がいいじゃないか、ねえ。
ヒコさんと元が川辺で花火してるシーンで、対岸にちらほら灯りが見える他は、元の革ジャンの背中の外灯を反射した僅かな光と、ヒコさんの腰辺りからTシャツの裾か何かがちらりと白く見える程度で、あとはほぼ画面全体が真っ暗闇に沈んでいる、という大胆なショットが一番に印象的に残った。

◇で、商店街のくだりで初登場するのが、誰より先頭切って下町ノリのパフォーマンスを往来で繰り広げたりと、ジモティなカタギ衆とも良好な関係を築いている古岩組の蜂矢(やべきょうすけ)。組長の愛人の子だが次期組長と目されているらしい。
蜂谷が自宅(たぶん)の縁側でくつろいでる最中にふと見せた、うつむいたシリアスな横顔のアップショットが気になる。唐突に五寸釘を、足元の地面にぶすりと落として突き立てたのが余計に。次回どうなるか。

◇元に対し、ことあるごとに「故郷へ帰れ」と突き放すヒコさんの優しさが、沁みる。
でも20そこそこ(多く見積もっても20前半くらいかあれは)若者たる元に人情の機敏が汲み取れるわけもなく、逆に「お前には(ヤクザの)センスないんだから」を理由にされたことに反発し、逆に粋がり出す始末。若いうちは強さの定義が単純だから。故郷の大三兄ちゃんの「家族を守る平凡な暮らし」の真の凄さもさっぱりわかってない。
ラストで元が夜空を見上げ「大三角(アルタイル、ベガ、デネブの星)が見えない」と呟いたのが、じわりとくる、切ないなあ。
ヒコさんはヤクザ稼業のしょうもなさ、くだらなさを身にしみて知っているから、時に以下のような諦観がぽろりと口を衝いて出るんだろう。第二話の、元を諭したあの時と同様に。
「でも、こんなもんかもしれねえな俺らなんか。花咲かせるでなし。ちょっぴり喚いて、消えるだけ。」

◇嵐の前の静けさ、といった感じの今回、でも水面下では何やらきな臭い企み、計画が進行中のようで。
今度はビジュアル担当もそれなりに活躍してくれそうな次回予告ではありましたが、さて。