チームオハラは今日もゆく!/カーネーション(68)






昨日いちんち、善作追悼の思いに心ゆくまで(!)浸り切ったのが良かったか、被った喪失感、欠落感が完全に埋まることはなくても、あえてハルの「辛気臭さ」を、窓を開けて追い払おうとする糸子じゃないが、ファイト一発!な気力に何故か本日は満ち溢れ、展開は痛ましくシビアではあったものの、本作ならではの血の通った、生きた人間描写を存分に堪能できた。

色んな個性がある。一個の人格の中にも、単純な決め付けの枠に収まらない(たぶん本人すら把握し得てない)多彩な持ち味がある。長いスパンで付き合っても互いに全てを分かり合えるわけじゃない。
人付き合いは、良くも悪くも錯覚と思い込みの産物だ。

だから(もはやそれ自体が目的化した)人格攻撃は、つまらない極致、となる。
論点が人格、ではデッドエンドで決着つかないわけだから。
糸子も千代も妹らも、昌ちゃんや縫い子の人らも、木岡&木之元のおばちゃん二人(美代&節子コンビ!)も、皆それぞれの持ち味を、それぞれの立場で、見方考え方で、もれなく発揮している。
誰が誰より優れてるとか劣ってるとか、通りいっぺんの歪んだ相対評価の愚にハマらない、クレバーな脚本が実に気持ちがいい、風通しがいい。

深刻になりがちな状況も、のほほんと柔軟に受け止める千代のたくましき鷹揚さ。
昌ちゃんの合理精神と確かな補佐能力。
たとえ弱っていようとイザとなると、さりげに年の功の知恵(すいとんレシピ)を伝授してくれるハル。
朴訥で素っ気ない(そして凄く気を遣った遠慮がちな)言い回しながら、ピンチの糸子に助け舟を出す木之元のおばちゃん。
長女より一歩控えめ&冷静ポジションの(いかにも次女らしい)静子。
糸子に八つ当たりされ涙目(よくあるパターンw)な清子。
最初に「手伝いに来てた町内会のおばちゃんらが、闇商売の噂の発生源」だと喝破したのが末っ子の光子なのも、ナルホドと思う。
それから木之元の節子さんに誘われ、連れ立って配給所に行く途中の糸子に偶然出くわし、だが根堀り葉堀り事情を尋ねる不粋をせず、よし、ほな一緒に行こ!程度で済ます木岡の美代さんも。
みんないい味出してんなあ、と嬉しくなる。

これまで一度も配給所に行かなかった理由を、冷静に自己分析してみせる糸子が頼もしい。
今後の商売上でも必ずプラスに働くことだろう。お客予備軍たるご近所から、勘違いとはいえ悪感情なんぞもたれて、商売が成立する道理はない。これは殆ど戦略と同義だから。戦略なくして今以上の成功は望めない。

また、なにせ内弁慶たる善作の実態(外では平身低頭、誰より細やかな気配りと人情の人だったはず)を知らぬ娘ゆえ、世渡り下手は致し方なきこととも。
昨日放映分で初めて父のもう一つの顔を知ったばかり、なんてね。
まあだから善作としちゃあ、世渡りの術にてんで無知な(でもそれは父の「家庭内では暴君として君臨したがった」二面性の弊害とも言えるわけだがw)危なっかしい娘に、せめてサポート体制を用意すべく、事あるごとに裏でこまごま顔つなぎに励んでいたんだろう。
にしても、ストレートに気配りの大切を徹底的に叩き込むなりして、転ばぬ先の杖で伝授してやりゃいいのに、と本音では思う。つくづくとめんどくさい(苦笑い)親父だ。

店主自ら、朝一番に店の前の掃除に励み、しつこく貼られる(一度剥がしても次の日にまた、のパターンと想像)「非国民」の張り紙を剥がす「不屈のファイト」を応援したい。

しかし昌ちゃんはともかく従業員や家族にまで、闇商売ではない事実が本当にきちんと伝わってなかったとしたら、致命的な過信という他ないわけで。
「わしがあかんといったらあかんのじゃ!」で背景事情の説明一切なしで済ませる善作そっくりに、ウチについてきたらええんや!(テキトーな方言すまん)で終わってたってことだよね糸子も。なんちゅう困った似たもの親子でせうか。
昌ちゃんの、みなの前であえて悪者になる(闇はホンマですか?と詰め寄る)ことで、糸子への嫌疑をきちんと晴らそうとする気遣いが・・・沁みるぜ!(糸子はどうもそこまでは気づいてないっぽいが)