周防と勘助とおばちゃんと/カーネーション(123)

また週一の縛り(←自主規制)を破るイレギュラーで、感想を書いてしまっている。
だがそれも、本日放映分がもたらす破壊力の前には、致し方なきかと。

なんたって、過去にさかのぼって糸子と深い縁ある三人(に関するやり取りや、よみがえる思い出=フラッシュバックも含め)が、いちどきに出てくるのだ。

しかも八重子さんから、おばちゃんこと玉枝が余命半年と知らされる場所が、あの因縁の、かつて八重子さんが持ちかけた(玉枝との仲が、勘助の病をきっかけに急速に悪化したことへの)取りなしを、糸子が蹴った時と同じ、家の裏手の、井戸の傍のベンチ、というのがまた。

とたん溢れ出す思い出が、後から後からやってきて。
初回から継続して「付き合ってきた」(ような錯覚に陥る)人たちの、
あの時のあの表情、言葉の断片、などと連想が止まらなくなる。

周防だけでなく「一緒にいた時間より、思い出してる時間の方がずっと多くなってしまった」懐かしい人たちの話題を、劇中で誰かが不意打ちのように口にするだけで、こんなにも心が動くのかと驚く。

勘ちゃんが最後まで口を閉ざしたままだった苦しみの原因については、
戦地から帰還した頃にすでに直感で、玉枝の推測のような経緯だっただろう、と考えていた。
何故ならあの優しい性格が一番ダメージを被るのは「そっち」だから。

戦争の非情を、理不尽を、罪を、律儀に一人で背負って、ひたすら自分を責めて、
誰にも打ち明けられず、さぞ辛かったことと思う。
未だに、あのカゲロウのように消え入りそうに小原家の前に佇む勘ちゃんを、その腕を
力まかせに引っ張って、行くな!絶対行くな!と押しとどめたい衝動に駆られそうになる。
そして馬鹿馬鹿しい妄想だと笑おうとして、でもいつも上手くいかない。

周防、出てくるのか、このままフェードアウトか、やはり気になるところ。
本日はモノクロ加工が施されての回想シーンでしたな。
夢の中のように白黒に沈んだ映像中、紅一点ならぬ、唯一ピンクに染まった桜の一枝(だったね!木岡のおっちゃん繋がりのやつ)の花は、「遅れてきた純な初恋」の象徴だったか。

玉枝の病室を足繁く見舞う糸子が、できるだけ普段通り明るく振舞おうとしての
「ちょっとおばちゃん聞いてぇなー」の気さくな呼びかけに、ぐっと胸がつまった。
あったかく懐かしく心地よい。
途中色々あってもなお、変わらない愛情のカタチ。

薄々察しはついていた北村の胸のうち。「あれ以来」ずっと気にしてたこと。
周防の奥さんの死を、これだけはどうしても自分が伝えたいと、
組合長に是非にと頼んだのも、悔恨の情あればこそ。
だんじり祭の日に、急に神妙な顔つきになり、糸子に何か言いかけてやめたのも、
周防と糸子の親密さへの嫉妬から迷惑をかけた(二人に騙されたと嘘の噂を流した)
過去の過ちに関することだったんじゃなかったか。
北村は根は悪いやつじゃない。人としての良心を失ってはいない。だから憎めない。

いよいよオノマチ糸子の出番としては最終週たる今週の演出は、記念すべき第一週を担当した田中健二、なのが感慨深い。
ライティングの美しさや、ショット間の繋ぎや切り替えのテンポなど、やはり巧いなと。






.