あの人が寂しい思いをしてませんように/カーネーション(131)

第23週『まどわせないで』
※今週のサブタイはヘラオオバコの花言葉
別の花言葉に「素直な心」というのもあると知り
ああ!と胸に染みた。
素直な心、か。じわじわくる。
なるほど、そういうことでもあるかと、
温かい気持ちが広がる。

スタッフも演者も、チーム一丸となって頑張る終盤、
せめて僅かなりとも応援したくて、取り急ぎの感想など。


◇電話口で、里香に可哀想と同情を示す糸子に、
お母ちゃんもヤキが回ったと、咄嗟に反発する直子「おばちゃん」らしい
「ヒガミ節」(苦笑)が何とも感慨深く。

自分にはそんな優しい言葉一つかけなかったくせに!との不満が
たちまちぱっと火花散らせる。
だがおそらく本人に自覚はないはず。

「子」はいくつになろうが「子」なのだな親に対して。
何か些細なきっかけでもあれば、たちまち時間を飛び越え、
あの頃の自分が甦る、あの頃の感覚に引き戻される。


◇コウちゃん、と呼ばれていた男性従業員、恵さん2号という感じの、
楚々としたオトメンな佇まいが、徐々に明らかに。
糸子の八つ当たりで、背中にお手玉投げつけられ、「な、なんですか」と
オドオド涙目で声が裏返るとか。
糸子の下で働くには、あの手のタイプが相性いいのかも(男限定で)。

◇糸子のあほボン二人への説教シーン、相変わらず劇伴のつけ方が絶妙で、
スタッフ乙!と嬉しくなった。淡々とやるべきことをやる姿。
大丈夫。クオリティ落ちてないから。ちゃんと見てるから。

◇金箔貼ったカステラの下品な成金趣味の外見は「あほらし」でも、
中身の「美味さ」に変わりなし。
つまり、お菓子ならぬ人も
「見かけはアレでも中味はまた別だ」とほのめかす。暗喩する。
これぞ渡辺あや脚本の巧みな引き込み術にして、
段階を踏んでテーマを提示する、説得力のもたせ方。

ああ、オノマチ糸子の、
あの幸せそうにうっとりと呟く「んま〜い(はあと)」を思い出し、ウル目(その1)。

◇向いの金券屋の青年にカステラ一切れおすそ分け。
すると控えめながらも青年は、「あの子、大丈夫ですか」と
里香の様子を気にかける言葉を口にする。
里香の視線から目を逸らし、関わり合いになりたくないと、
店の窓口の仕切りを冷たく閉めもすれば、
おずおずとながら、具合はどうかと心配もしてくる、

だから糸子は「自分から」気さくに声をかけ、近づいていく。
投げかければ返ってくる、打てば響く、人の心を信じて。
最初は敬遠した不動産屋がその場を通りかかれば、
兄ちゃんらもカステラ食うかとニコニコ。
「あんたらの好きなキランキランやで」、あっけらかんとした毒気の可笑しみ。

◇家の裏、というか横手だな、の路地も、そして井戸も、まだあったんだ!と
もうそれだけでウル目(その2)である。
遥かな来し方、積み重ねられてきた年月、のギュッと詰まった場所。ただただ懐かしく。

◇もしもこの世におるんやったら、と
遠く離れて幾年月、今となっては生死もわからぬ初恋の「あの人」への純な気持ちに
またまたウル目(その3)。
「寂しい思いをしてないか」
気遣う独白に、あの日の糸子の溢れる涙がよみがえる。
寂しくないですやろか。そう三浦組合長に問うた凛々しい横顔の、鮮やかな記憶。

過去と現在とが一瞬で繋がるような錯覚。いや或いは時間の方が錯覚なのか。




.