関東スタイルここにあり/梅ちゃん先生(10)

のんびり見続けた甲斐がありました。地味にガッツポーズ。
本日放映分は、尾崎将也脚本の良さが遺憾なく発揮されていて
今後への期待を持たせてくれた。
この調子で進めてくれたら、中々に楽しく視聴継続できそうじゃないかと
ひとまず安心した。

これまであまり内面が窺い知れずにいた厳格な父、建造の
息子竹夫に注ぐ愛情のほどが垣間見れて、初めて好感が持てた気がする。

松本の病院長のポストを蹴ったのも、現在抱えている自分の患者や教え子を
途中で投げ出せないから、と模範解答を口にした後で、ついでの付け足しの
ように言い添えた、息子竹夫の受験のため(息子を東京に一人置いては移れない)、こそ、
断る最大の理由だったのだと、あのシーンを振り返って分かる。

あの息子について話す時の、ついつい隠しようもなく出てしまう親ばかの誇らしさ嬉しさ。
なのに家族には断った理由を「田舎は好きじゃない」なんて言ってしまう。
竹夫を厳しく叱りつけ、家出までする覚悟があるのか問うたのは自分なのに、
愛息に実際出ていかれてると寂しくて、つい教え子たちを家に連れてきたり、
果ては深酒して寝込むような、普段はしない「はみ出し方」をしてしまったりする。

決して誰にも弱音を吐かない、武士は食わねど高楊枝を地で行く、父の徹底した痩せ我慢。
たぶんこれは昔の、とりわけ戦前の昭和くらいまでの、典型的な東男(あずまおとこ)の有り様なのだろう。

今回初登場の大学の教え子青年もまた、いかにも東男らしい魅力にあふれたキャラクターだと思った。
昨晩、建造に招かれ他の学生たちと訪れた川村家にて、姉の松子に一目惚れ、
その興奮冷めやらず、朝になるまで付近で時間を潰し、朝一番に再び川村家を訪問、
そして建造に向かい、悪びれもせず、いきなり本題を切り出すのだ。「松子さんをください」と。

これこれ、これだよ、とニヤニヤしていると、

今度は松子本人が「お断りします」と、取り付く島ないきっぱりした態度を見せた後、
戦地で亡くした婚約者が満足するような相手でないと無理だと、思わずキツイ本音を漏らすわ、
ここまではっきりフラレてしまうと言い返せません、青年は青年で苦笑いしながらも
真っ直ぐにその言葉を受け止めるわ、
二人のやり取りを傍で聞いていた建造も、ひと言「そういうことだ」で済ませるあっけなさだわ、
さらに追い打ちで、
では梅子さんで、とか簡単に相手をとっかえる青年の、いっそ清々しいまでの節操のなさだわ、

これはもう、尾崎脚本の本格的な本領発揮な回、と見ていいんじゃなかろうか。オモロー

単刀直入。飾らない無骨さ。身も蓋もない率直さ。
素っ気なくて不躾で、とっつき悪くて、の鎧をあえて着込んでまで、
やせ我慢を貫こうとする、弱みを見せず格好つけようとする。

ゲゲゲの女房』の源兵衛(大杉漣)や、『カーネーション』の善作(小林薫)などに
共通する、「西」特有の、隙だらけな愛嬌(笑)には乏しくとも、
「東」のやせ我慢の裏をめくれば、そこにもちゃんと胸キュン要素は見つかるのであった。
本作の建造(高橋克実)も、今後さらに誰とも似ていない独自の人物像が、
きっちり練り上げられてくるものと期待している。

※昨日は下村家について「家族間のつながりが希薄に感じる、があれがよくあるフツーの家族像かも」などと某所で呟いたんだったが、その定義はもしかすると東の、いや関東、いやいや東京近郊まで狭めるべきか、限定の話かもしれない、と今ふと思った。
個人的にも下村家のサバサバあっさり関係は馴染みがある(無理のない)距離感ではあるが、それも人それぞれ家族それぞれだろうし。逆に、だから下村家スタイルを間違いとまでは言えないはずだし。ね。





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