誕生、後白河帝/平清盛(18)


三週間ぶりになるのか感想。欠かさず視聴はしてるんだが。いまいちモチベが上がらぬまま本日に至る。

モチベ低下の要因には、なにより松ケン清盛に以前ほどぐいぐいこちらに迫ってくる輝きが感じられず、それで物足りない、というのが大いに影響している。
あんなにキラキラしてた目ん玉も心なしかどんより曇り、その身内からはどこか決定的に場違いないたたまれなさを漂わせた、切れ味鈍ったナマクラ刀に落ちぶれた哀れなる愚者、に見えてしまうのはツライ。
腐っても鯛ならぬ大河の主役を、体よく脇なんぞの引き立て役に落としめるとは、脚本も罪深いことをしてくれる。
ここに至っても未だに威厳ゼロはさすがに拙かろう。
松ケンだってどう演技していいやら迷いがあるんじゃないのかと気の毒になる。
良さを引き出すどころか殺してどうする。なんという勿体ない無駄遣いを。

先週から部分的にコーンスターチ減らした(または排した)映像に切り替えたことで、全体のトーンにメリハリが出たのは支持できる判断。
鮮明な映像では芸術性が損なわれる、などという浅はかな思い込みがまことしやかに伝搬する方がよほど厄介だろう。
「汚い」ではなく「見にくい」のはTVドラマとして疎かにできない問題なはず。
プロらしからぬ(頭でっかちの半人前の青臭い屁理屈みたいな)勘違いに思える。

鳥羽ちゃんの優柔不断には今さら驚かないが、あまりに唐突に、お涙頂戴に酔いしれた甘ったるい後悔語りを聞かされた家成(故人に合掌)の、思わず「ハァ?」と気の抜けた返事には、こちらの気持ちも瞬間シンクロするようだった。
とはいえこの国の政(まつりごと)が、かように矮小な我欲によって左右されてきた歴史を無駄に壮大な調子で描かれても、それもまた嘘八百のファンタジーなわけで。
案外この朝廷内人間喜劇のショボさに匹敵する当時の内情だったのかも、なんて。

見下されてきた武士たる平氏の力が、今や朝廷も無視できぬ影響力を誇る存在に成り上がった、と台詞やナレで説明されても、具体的描写もなしでは肩透かし感が半端ない。
ずーっと忠盛との親子対立にかまけてた清ちゃんが、どういう経緯でそんなに偉くなっちゃったのか、そこをこそ丁寧に描いて欲しかったんだが。
軽んじられる立場から一目置かれる存在へと変わる過程をこそ見てみたかった。
これでは忠盛のお膳立てに乗っかっただけ、の無能にして役立たずと印象付けてるようなもの。主役なのに!

平氏一門が集って、法皇上皇どちらにつくか話し合う場面は、前回の弓射るくだり同様、各自の個性を簡潔に書き分ける工夫が光っていた。
皆がてんでに言い合い、その勢い余ってモメたりもする、カオスかつ自由で開かれた雰囲気を、面白がって見ている清盛もいい。
(いつぞや僧兵に出くわし一触即発なムードになった時のあの眼つきと同じ、明らかに楽しんでる風情)

八番目の子為朝の素行の悪さが出世の足を引っ張るので為義やむなく悪左府(頼長)の庇護を当てにして擦り寄る、という場面で頼長より先にペットのオウムから映すカメラワークが地味にツボ。そんなとこでウケを狙わずともw

その頼長と父忠実の関係に、微妙に亀裂が入るきっかけとなるやり取りが地味ながら面白く。
父が息子の度の過ぎるやり方をやんわり非難すると、息子は口出し無用と取りつく島なく突っぱね、さらに次からは父といえど容赦はしませんよ、と傲慢な態度で釘を刺す。
鳥羽ちゃん崇徳ちゃん父子といい、裏テーマには父と息子の確執が絶えず通奏低音のごとく横たわっている。
本作に惹かれる理由はたぶんそこなんだろうなと(個人的には)。

しかし繰り返しになるが、鳥羽ちゃん崇徳ちゃんに取り合いされるほどの何を清盛はやったのか、説得力薄いのが引っかかってる。
崇徳が直々に力を貸してくれと頼むのを、すげなく「鳥羽側なんで無理」とストレートな言い様で断ってしまう清盛の描き方にも失望した。
熟考もなく脊髄反射的に即答するなど年端もいかぬ子供じゃあるまいし。(リフレイン)主役なのに!

服喪中の身の頼長を、次の帝を決める議定の場から巧みに排除する信西と師光の暗躍、という後の伏線も、さりげにいいアクセント。

清盛VS雅仁の場面、交互にアップショットで切り返すところで、清盛を(画面に向かって)斜め右向きで撮るのなら、当然にして(顔を合わせて対話しているのだから)雅仁は今度は右向きではなく、左向きで撮らないと。
でないと視聴者側からの状況把握が狂ってしまう。
最後のロングで引かれて初めて、二人が向き合っていたのが分かった。
てっきり(二人共に右向きのアップショットだったから)雅仁が背中を向けて話しているのだと思っていた。
そう思わせたのは被写体の捉え方が間違っているから。
無駄に混乱させる演出では明らかに失敗と言わねばならない。

まあ最後は崇徳ちゃんの迫真の演技で救われたけど(本人は救われてないが)。

それと雅仁こと松田翔太による「涙が一筋頬を伝う」の図の美麗ショットにも。


それからこれは根本的な問題点として、
公の場での鳥羽っち、得子、璋子、の三つ巴の暴露合戦のような「躊躇なくバラす」露出狂もどきの下品さだけ、何とかして欲しい、極力回避して欲しい、と切実に思う。
大河はだから腐っても鯛が、もとい大河であってくれと。NHKの良心と矜持に期待。







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