愛のから騒ぎ(37〜40)/梅ちゃん先生


週末のまとめ感想にするつもりが、いちどきに負担くるのもキツイかと思い直し。
主に週前半を振り返っての感想。(ちょうどエピ的に一旦区切りがついたのもあり)

メインは
伊東をめぐる弥生VS雪子な不協和音発生から、弥生のコンプレックス解消までのエピ。
建造似(梅子談)な松岡とファザコン梅子の、恋愛に不慣れ&不器用同士のエピ。
(出会いの最初から松岡は梅子が気になっていたのは、彼女への目線や素振りで明らかで、
下村家訪問の際の梅子に向けた視線の強さだの、第三者のヤジを異様に気にするだの、
そのことごとくが「特別な好意」の証明になっていた感)
サブで
松子と真田の恋模様エピ。

都合3つのラインを同時進行で書き分けるのは見た目ほど容易ではなかろう。
目立たない部分(衣料なら裏地、料理なら下拵え、的なもの)にこそ注力するのが本作の特徴なのか、
ひねりを効かせた味わいがあり、二重三重の意味を読み取るのも可能な、懐の深い奥行きを感じる台詞の応酬も、表面的にはさらっと聞き流せる他愛ない会話の体裁をとっているので、受け取る側次第で浅くも深くも解釈できる幅があるのが面白い。

そこに演じる俳優による視線とか台詞の間合いとかが加わるから、映像を仔細に追っていれば
言葉にならない感情のひだがある程度は察しがつく。たとえば前述のとおり
梅子に対する松岡の、彼本人にも意識される以前の「特別な感情」(傍目はもちろん相手にもわかりにくい「一目惚れ」の現れ方ではある)とか、
弥生が決めた自身のキャラ設定と隠れた本音との亀裂が一挙に噴出した結果の(強烈な女臭さ満開な)「アンチ恋愛同盟」工作であるとか。

そんな弥生に雪子も負けじと江美を銀座のオーダーメイドワンピで買収(要するに「そういうこと」だろうw)し味方につけ、
弥生の弱みを鋭く指摘する反撃をお見舞いして、同盟崩しを図る。

なるほど男目線から描いた女子だからこそ、同性が気づかない「痛い部分」をも冷静に観察できる強みもあるか。
一歩引いて「興味深い(言葉を変えれば物珍しいw)絶対他者」として眺めることで、
女子特有の悩みやコンプレックスや見栄や対抗心などが、説得力持つサンプルという形で提示可能になったんじゃないか。
さらに突っ込むなら、元々どんな人にも男子成分女子成分はあるので、その持てる潜在能力を十二分に活用したとも言えるし、
共通項に乏しい絶対他者ほど、観察者に適任な者はいないと言うこともできる。

要するに男に女は描けない等の言い分は100パー正しいわけじゃない。
であるなら前提があやしいまま導き出された結論に信は置けない、ということになろう。

ここまで見てきた感じでは、
大原拓演出と尾崎将也脚本との相性の良さは、これまでで一番ではないかという気がしている。
カット割りのタイミング、とりわけ笑いに落とす際のタイミングが脚本のリズムと合致している、
ツボを心得た演出がなされている点において。
あとできればもう一人くらい担当週が楽しみになる演出家がいてくれると心強いんだが。
新戦力の投入を待つ。

恋という病に突き動かされてのロミオの行動が理解できず、理屈に合わないとツッコミ入れる松岡に心底驚いた梅子は、
医者という仕事は人間の体だけじゃなく、もっと気持ちを知ったほうがいいと思うと、めずらしくハキハキ自分の考えを言う。
ここから察するに気を許せる異性(今までだったらノブとか)には、弥生みたく「周囲の(また自分もそうに違いないと信じ込んでる)イメージ通りのキャラ」から外れた意外な一面が顔をのぞかせるのではないか今後も梅子は。
「殻を破るべき」とは雪子の、一点の曇りなき正論だけにキツい助言だったが、あるいは梅子にもそういう時がいつか訪れるのかもしれない。
とことんドジっ子駄目っ子キャラからの脱皮の時が。
まあある程度はそうなってくれないと設定上困るわけだが。

松岡の言に話を戻すと、理詰めで感情を推し量るのに無理があるのは、
人の気持ちなど破綻してるし矛盾だらけだし、いたるところに綻びがある愚かしさの極みだから。
理屈は通らなくて当たり前なのだ。

ここでも以前述べた「心こそ大切」とのテーマがしっかり主張される。
おそらく前編通して本作に流れるスピリットなんだろう。
実は医専入学後の梅子を描くのに、勉学よりダンスパーティや演劇という余暇に比重を置いたのも
確信犯ではないかと、今週辺りから考えるようになった。
大胆に勉学に勤しむ描写を除外したのは、一面的見方からすると無駄と切り捨てられる体験に、
心を育む要因があるということかもしれない。
もしノーマルに勉学方面をクローズアップすれば、どうしても技能的要素が前面に出てくるのと、
「心こそ大切」を体現する梅子というキャラの存在意義が薄くなり、テーマがボケるからではないだろうか。


本作の特徴を今一度考えるに、短いエピかつ複数のエピの集積でドラマを進めていくのと、
「一つの型にはめにくい複雑に揺れ動く」本心とは異なる、もしくはズレた、
いわば「便宜上選択した一つの型でしかない」言葉(会話)の応酬で、
互いの精神的距離や関係性を際立たせる手法がメインに据えられていて
(とはいえ最終的には本心が明らかにされるお約束)、
その屈折度合からしても、一面的理屈に沿った見方とは相容れなくて止むなしとは感じる。
作品自体に、見た目の表層と備えた内実との落差があるのだからなおさらだ。
これほどの表層理解との断絶は果たして予期した事態だったのか、そこは気にはなる確かに。

にしても、あかねに典子ときて、今度は弥生が「どうせ私なんて(伊東さんの相手役演じるのは)無理」と
コンプレックスに押しつぶされ怖じける本音を吐露したわけか。
この連鎖がどこまで続くのか続かないのか、にも興味アリ。


ところで喫茶店で真田が注文した「お汁粉2つ」には、以前の妹梅子を前に、自分の分だけお汁粉を注文した
竹夫の気の利かなさが、女として見てない下心のなさでもあったことに思いを致したことだ。
そしてこの「喫茶店で汁粉」の組み合わせが、前作では「ぜんざい」だったことにも。
お隣さんの安岡姓やOPの店屋の看板にある北村姓といい、あとまあ同盟とかタケオ名やらは前々作だったりと、
確信犯的に遊んでいる印象(アンチ同盟あっさり撤回させるwとか)。


最後に本日放映分での、建造が肩入れする理念にしろ、下村家の女たちがよって立つ現実にしろ、
それはいったい誰のため(に守ろうとしているの)か、が肝になるんだろう。
大黒柱が倒れたら家族の先行きはどうなるのか、一家の長には責任重大だ。さてどう折り合いがつきますか。






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