愛のから騒ぎ(42と41)/梅ちゃん先生

今週のタイトルが竹夫とあかねの恋の行方にも掛かっていたとは皮肉な。
しかも週の最終日に彼らのラインが一気に浮上するとは(ああでもそういや予告であかねが結婚するとか言ってたんだっけ)。
さらに、法の厳守を貫き餓死した判事の理路整然たる主張への支持表明として、家族の心配をよそに意固地に配給分のみの食事制限を続ける建造エピと絡めてくるとは。

そうか複数エピ同時進行は構成ややこしくて大変ではあろうが、こういう化学反応を作り出せる利点もあるんだな。
誰がどう親父に意見するかと思いきや、なるほどね、似たもの同士の父と息子を衝突させる、か、
息子が父にぶつけた非難はそのまま自戒の言葉でもある、という風に持っていけば、単純な親批判にはならないから、父と子どちらの立場に仮託して見ている視聴者にとっても(一方的な攻撃の構図に感じる)不快感はない。
エンタメに欠かせぬ客への配慮を感じる。いいね。

建造が食事制限を止め、闇経由の食品を口にした際も、一家の長による「いただきます」の声が掛かるまで、
食卓を囲む他の家族は皆、目の前の料理に箸を付けない、というさりげない描写にも父への敬意が現れていた。
これもナイスフォロー。

竹夫が建造に言い放った「理屈もへったくれもあるか!」、これ苦笑いを伴う推測なんだが、
竹夫に言わせた脚本家(尾崎将也)自身の自戒の言葉でもあるんじゃないかという気がする。
松岡の理屈っぽさも然りで、「結婚できない男」の阿部ちゃん同様、本作も一部男子キャラへの
本人投影度は高いと見た(邪推ってか)。
理屈だけに偏ると見方や判断が歪む場合が多々ある、そう潔く認める、
自らの囚われの心を冷静に見つめるのも勇気がいる、
現代は(我が身も含めて)理屈屋の天下だから、なおさらこの内省は必要に思える。
で理屈屋の対局に位置するのが梅子。
彼女の飛び抜けた素直さに過剰なアレルギー反応を示すのは、その意味で実に象徴的。

にしても家を出て働く竹夫の成長が、よく分かる台詞でありシーンだった、
もう親への反抗じゃなく正論で諭してるもんな、対等な目線で。
建造にしても、大人びた息子に嬉しさ半分淋しさ半分が本音だったかもしれん。
それから息子から父への変わらぬ敬愛もひしひし伝わったことだろう。
「お前と一緒にするな!」「一緒にしますよ、父子ですからね」うーむ憎い殺し文句よ。
家族のためにも患者のためにも(お父さんには)飯を食う義務がある!
これ以上お母さんたちに心配かけないで下さい。
そう、誰のためにそれをやるか、が大事。
家を離れた竹夫にはそれが分かる、分かるようになったんだな痛いほど。

昨日の弥生と雪子の仲直り、弥生が秘めた伊東への恋心を最後まで雪子にはバラさない、ただ雪子が羨ましかっただけだと言い、素直に謝ったのも、
それをまたこちらも素直に受け取る(それ以上勘ぐらない、まあそうなのと納得する)雪子の鷹揚さも、絶妙だった。
後腐れない清々しい関係の微笑ましいこと。

梅子の、食いしん坊のくせに配給以外を食べない父への心配から、「今日から私も食べない」宣言したその夜に挫折、のダメダメさ加減も可笑しい&可愛らしい。

しかし父の過激な食事制限を心配して食が進まないとか、竹夫とあかねの行く末が気になって食事に気もそぞろとか、
いつもいつも誰かを気にかけてばかりいる子なんだなあとあらためて。
技術さえ追いついたら(きちんと身についたら)最強の医者になれるねこれはね。
人を救うために極限まで我が身を惜しまず尽くし切る「献身」こそが、他に並びなき燦然と輝く医者魂、その素質は十分すぎるほど備わっている梅子、なのでした(つられてみた)。

松岡には「うちの父と似てる」
信郎には「ノブ、おじさん(信郎の父)に似てる」
ファザコン梅子のわかり易い評価基準。幼馴染みは分が悪いか。

お互いに観たい映画を別々に観るのは間違ってるとは思わんが(私もたまにやるw)、ただ初デートでやるのは徹底してるなとヘンに感心したり。
一般的な恋愛作法とはとことん無縁な松岡。
まあ一貫してるっちゃ一貫してるんで悪感情は沸かない。
こういう無駄に気を使わなくて済む、陰にこもった裏表のない人は貴重。気持ちがいい(山倉とかもそう)。

映像面にも少々。

以前のコーラに見えないコーラとは違い、ちゃんとサイダーの瓶に気泡が上がっていたのが良かった。
炭酸飲料は気泡が命さ。
シュワシュワしてなくて醤油みたいだったコーラの轍を踏まないよう、今後も頼む。

竹夫に「中島という人と結婚します」報告をした後で、降りだした雨に濡れながら呆然と人ごみの中を歩くあかねが、
以前の回で竹夫があかねとの結婚を想像しつつ眺めていた「貸間あり夫婦用」の張り紙の前を横切るんだが、
その張り紙も今や雨に濡れそぼって文字が滲んでしまっているという(二人が直面した厳しい状況への)暗喩のさりげなさも良し。







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