インターンはつらいよ/梅ちゃん先生(49〜54)

今週の構成も引き続き単線エピにあらずで、
インターン修行に励む梅子と、幼馴染の町工場のせがれ信郎との二本立て構成。

父の幸吉と二人で地味にネジ作りをするのを、内心「やり甲斐の薄い仕事」だと懐疑的だった信郎は、
ついに自分たちの仕事を軽んじる発言を直接幸吉にぶつけて
「てめえの技術の未熟をウチの工場のせいにするんじゃねえ!」と一喝されてしまう。

たしかに駄目なのは工場でも父でもなく俺だったと、今まで××のせいだと文句たれては
責任転嫁して逃げていた自身への情けなさを直視した信郎は、そのまま一挙に仕事への意欲を失う。
どうせ俺は駄目なんだからと投げやりになって。

そこで幸吉は仮病を演じてまで、息子の自覚とヤル気を再び呼び覚まそうとし、
梅子はそんな信郎の愚痴を、あえて「弱虫!」と泣きながら突き放す。
自分自身も「弱虫だから」と言い添えて。
だからノブも自分の弱さに負けないで、挫けないでと伝えかったのだろう。

自分より経済的に恵まれた環境にいる梅子に対し、別に信郎はヘンに羨んだり卑屈になっているわけではない。
格差は厳としてある。事実として。それを今さら悲劇ぶって拗ねてみたって駄々こねる子供と大差ない。
信郎はそんな小さな男とは違う。ただ「かくありたし」と思い描く理想に遠く届かない、情けない自分の
今の実力の程を痛感して、一時的に萎れていただけなのだ。

翌朝には一転、ヤル気を漲らせた真剣な眼差し(実にいい顔だった)で仕事に勤しむ信郎の姿を
目にとめてふんわり微笑む梅子ともども、心が晴れやかになった。
そうその調子だ負けんなよ!と景気よく背中でもパーンと叩いて応援したくなる。

結構シビアな形で、二人の間の格差が表現されていることに驚く。大胆といえば大胆である。
梅子のインターン採用面接試験のシークエンスも、結局は同大学教授である(さらに面接官としても
立ち会った)父建造のコネのおかげだと、たとえ受け取られても不思議じゃない経緯にしたのは
単なる偶然などではなく、「どんなキレイゴトでごまかそうと格差があるのは事実」だとする
脚本家の意図の反映だろう。
それは過剰なヒロインマンセーを感じないことや、ヒロインエピと脇の人物エピを並列で進行させる手法などに通じる、
尾崎将也脚本のバランス感覚に拠るものだ。

「緻密さ」や「重厚さ」とは真逆の「いい加減(良い加減)」で「ライト」な作風を理由に
脚本の質が劣ると決めつける暴論の類が、今もネット上で横行しているかは関知しないが
twitterという公の場に書き込まなくなると、自然興味も離れてしまうものらしく)、
ストーリー主体で引きこんでいくタイプの脚本ではないこと、すなわち質の悪さであるかのような
無茶苦茶な論理展開は、さすがに下火になったんではないかと楽観予想(当たっているといいな)。

ささやかなシチュ、会話のやり取りの妙、濃い(一癖も二癖もある)キャラたち、が魅力の主体なのに
ストーリー自体に二転三転する華やかさや興奮を求めても仕方ない。
ゆるい見かけにテーマは意外と骨太で硬派、そしてストーリーの体裁は至って地味(人によっては散漫とも
映りかねない確たる見通しのつきにくさ←現時点では)、だがそれがいい、というのが本作なのだから。

そういえばインターン採用面接時に、梅子がパニクって口走った「日替わり定食」へのこだわりも、
本音ではそこまでの情熱はないはずなのを、どういうわけかマズイ方向へ方向へと墓穴を掘り続けるジレンマは
とても他人事とは思えなかったり。苦笑
言葉と内面のズレが結構な頻度で出てくるのが、個人的には一番の注目ポイントかもしれない。
たとえば松子の、結婚退職を周囲から当然のように期待されることへの居心地の悪さと、
真田の言葉に未だに呪縛されたまま無意識に揺れ動く女心の関連とか。
言葉にならない(または言葉とは裏腹な)本音の部分が興味深い。

松岡との再会は、映画館で分かれて以来三年ぶりかもしれないが、梅子が恐縮してたのは、
その後で貰った手紙に返事を出せぬままだった(とナレでも説明してた)経緯に対して、だろう。

残り僅かの生命だと思い込んでいた篠田が、それが勘違いだとようやく納得した途端、脱力してへたり込み、
梅子の助けでまさかの再会を果たした妻子と抱き合い安堵と感謝の涙に暮れるのを、
側に立つ建造の(その時点では梅子の早合点だと思っていたせいで)非難めいた鋭い視線にも気づかず、
ただただ篠田の喜ぶ様子に一緒に涙ぐみ、本当に良かったという顔つきで篠田家族を見つめている梅子には、
毎度のことだがその一貫したブレなさ加減に感心するばかりだ。
ゆるキャラのようで、芯がしっかりしている。
こういうところがやはり硬派だ。見かけじゃない。勇壮な見かけなんぞはくだらん瑣末。
ブレない信念に比べたらどれほどのこともない。
この子は大丈夫。きっとこの先何があろうとも。大丈夫だと思わせてくれる。頼もしいじゃないか梅ちゃん。

にしても梅ちゃんて子供の頃から木登りしたり、屈伸運動させても山倉に勝る体力を披露したりと、
見た目を裏切る活発で運動得意な娘さんのようだ。何という意外すぎる一面。
だが医者になるには有利な要件のひとつだ。体力的にもタフでなければまず続かない。
医者は過酷な肉体労働でもあるから。

ちなみに家人は本作を気に入るあまり、日に最低二度は視聴してなお飽きたらず、
初回の録画分(本人欠かさず録っている)から見返したりしてる。どんだけハマってるんだか。
曰く「面白いから(にっこり)」だそうだ。上には上がいる!








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