はつ恋(3)/Secret Place


遅ればせながらラストに痺れて嵌りつつある第3回。

我が身を苛むダイレクトな痛みになら耐えられても
亡き母を連れ去った同じ病魔にじりじり追いつめられる恐怖はさすがに耐えがたく、
収まらない発熱と痛みに不安が募り、衝動的に(実はパリ行搭乗直前だった)三島に連絡を入れ
助けを求める緑。

「こわいよ・・三島くん、私死んじゃうの?」
「殺さない・・絶対に!」

男が人生を捧げた(その男に医者になる覚悟をさせた)最愛の女は、誰かに愛されたい以前に
まず自らが愛そうとするような美しい資質を持つ人特有の
家族や周囲への気遣いから一人で健気に強がって頑張るタイプで、
そうやって誰より元気に明るく振る舞い続けた果てに、自分だけに弱さを露呈させての
SOSサインとなれば、それはもう
全て投げ捨ててでも駆けつけないわけにはいかない、男子たるもの。

鉄板なやり取りきたよー参ったよー。
3話目の終盤にきてようようスイッチ入った感じだ。
勝手に盛り上がるテンション。
待ってろ緑!今行くぞ!(さらっと流してくれると助かる)

まあでもその終盤の盛り上がりに至るまでの、
退院した緑を三島が、白馬ならぬ真っ赤なクーペで自宅へ送り届ける途上で言う、
「道を間違えちゃったみたい」の、女子向けにちょっとした定番スリルをサービスする撒き餌や
「カーナビ知らないんだ日本の道に不慣れだしパリ暮らしに不要だったから」の、
完璧さをより引き立てる微笑ましい意外な弱点=「イイオトコ」の条件、をクリアするネタのベタさや、
さらに三島が定期健診後のミドリを病院の豪華な自室に招き、ワイン付きランチをご馳走する、といった
ハーレクインもかくやな女子の妄想花ざかりなシークエンスなど、

まるでこちらを試すように(ははは)襲い来る障害に何度か挫けそうになりはしたが、
一旦突破してしまえば何だそんな瑣末なことという気になるから不思議だ。
私がどうこうよりメインターゲットたる女子に歓迎されれば企画としては万々歳なわけで、
そこにおまけで私のような外野が乗っかろうと乗っかるまいとだから
大したことはなかろうと高を括っていたりする。


今回は「郷愁」がキーワードだったようで。

フッた側(男)が遠い目をして懐かしげに語る「共通の思い出」には、一人合点による美化という
脚色がふんだんに盛り込まれている、とはやんわり遠まわしに指摘するフラれた側(女)の言い分だが、
そこにはまったく恨みめかした調子はなく、今も自分は(君に)憎まれているかと直球で聞いてくる男を、
そんな話は止めましょう、とさらりかわしながらも、

恋人と思っていた男からこれ以上ないくらい残酷な言葉で傷つけられたことが、言葉のもつ絶大な力、
影響力というものに目覚め、言葉で人を傷つけるより人を助けたいと思い、言語聴覚士を目指した、と
身に覚えのあるはずの相手の男、すなわち三島をちくりと一刺しするような打ち明け話を披露する緑。
あくまで穏やかな笑顔を崩すことないミドリを評して、やはり君は強いひとだ、と感嘆を漏らす三島。

ところで緑を自宅まで送って以来、三島は彼女を「dori(ドリ)」と高校時代の愛称で呼ぶんだが
(うーゾワゾワが止まらん)、緑がさして厳しい拒否反応も示さずなんとなく鷹揚に受け入れている形だった
(呼びはじめの最初はね)のは、(君のことを)一度も好きなどと思ったことはない、とまで言われた相手に、
いまさら愛称呼びは止めて欲しいと躍起になって反応するのも変か、ともしかしたら躊躇したんじゃないかと思う。
あちらが「瑣末事」で片付けているらしいことに、こちらが過剰反応するのは見苦しい、とのためらいも
どこかあったかもしれない。
もうどちらもいい大人なんだし。もはや過去の終わった話なんだし。みたいな。

なーんてでも最初の出会いで突発的に示した激しい拒絶こそ緑の本音なンだよなァ、だいたいこの人
自分の感情を抑え過ぎだと思うんだけど、頑張りすぎるのも同根で、もう少しイイ子ちゃんから降りればいいのに、
楽になるのに、とか、まそこが良さでもあるんだろうが。張り切り過ぎが見ていてちと痛々しい。
そんなに一人で頑張っちゃわなくて大丈夫だって、なんとかなるもんだって、などと余計なお世話の助言が
口をついて出そうになる。

大事な話があるの!と大学病院?に押しかけた過去エピん時の緑が、三島の投げた手酷い言葉に傷つき、
彼の立ち去った後で、傘を取り落としたそのままに呆然と雨に濡れそぼりつつ、
そっと腹部に震える手を添えていたのは、もしか「そういうこと」なのか。


「今、幸せなんだね?」「はい、とっても」
申し分ない満面の笑みで答える緑。

「それが聞けて良かった。俺、パリに戻るよ」
との三島の言葉に緑がわずかに動揺を見せるのがいい。
内心キターと盛り上がる奴がここに約一名。

それで「元気で」とお互い握手して別れるも、ドアの向こうに去る直前の彼女を男が、つまり三島が呼び止め、
慌ただしくTel番号を記したメモ書きを渡し
「何か心配なことがあったらいつでも電話して」と言い添えるのが、またいい。
そうこなくてはとニヤニヤする。

おそらく三島の緑への気持ちは当時と変わらずあるんだろう。
緑へ投げつけた手酷い拒絶の言葉も、いわば医者になる約束を果たすためにやむを得ず
取らざるを得なかった「方便」だったんだろう。
男と女ではたとえ最終目標地点は同じでも、「そこへ至る手段の射程距離」は
まるで相容れない場合が多々ある。
しかも互いに「そういうものだ」と了解し合えてないから、「何故そうなる?」と不満や不信ばかりが生じもする。
互いになんと珍妙なる生き物かと好奇心が潰えることなく、反発しつつも惹かれ合う。
面倒くさいのと面白いのと。
だいたい自分とは異なる他人(別の人間)というだけで興味は尽きないんだけどね。
何故そうなる?の意外性は常になにかしらあるから。

今回の名言は、パニクった緑が思わず知らず口走った本音、「優しくされると怖くなる」でしょうか。
三島のあの過去の発言が相当の虎&馬だったと告白してるに等しい。
罪作りな三島はしかし、助けを呼ぶ愛する姫の声にこれまで築いたおのれのキャリアをなげうってでも
駆けつける白馬の王子、なのであった。いや違うな、どちらかというと三島は
世間から正体を隠した知られざるヒーローの立ち位置に近いような。
彼の彼女に対する思いの深さが第三者に知られてしまえば、たちまち不倫として二人の関係は貶められる、
それは愛する彼女の名誉のためにも決して許されない。
ではどうするのか。どうなりますやら。
そんななか、安定の大竹まことのシーンが嬉しかったり個人的に(しつこいか)。









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