梅ちゃん先生/恋の後始末(60+梅子と松岡のこと)

今週のエピに見る「患者への配慮」の望ましいあり方のイメージが
梅子と松岡で根本的に異なるのは二人の性差も大いに関係している、ということのようだ。
少なくとも書き手はその方向で進めているように感じた。

そういえば先日の(再びの連想ではあるが)ドラマ10「はつ恋」の感想に、

>男と女ではたとえ最終目標地点は同じでも、「そこへ至る手段の射程距離」は
まるで相容れない場合が多々ある

と書いたんだったが、本作に当て嵌めると、梅子は目前で「今」苦しんでる身近な患者に関心が向かい、
対して松岡は「今後」苦しむことになる不特定多数の患者に思いを馳せる、という射程距離の長短の違いがある。
言い換えれば女は近くに、男は遠くに、価値を見出そうとする。どちらの見方も必要で、要はバランスの保ち方なんだろうが、
ゆえに松岡が本人を前にして感に堪えない風に漏らした「梅子さんは、面白い」には、
自分にない予想外の発想や思考を提供してくれる異性に感じる面白さ、も含まれているんだろうと思う。

梅子の投げた言葉の意味を理解できない松岡が、それを疑問形にして鸚鵡返しをするのに、
暗黙の了解的理解を期待したい初歩的段階から、既につまづくような話の通じなさ加減に呆れるのと、
いちいち言葉尻に絡んでくる面倒くさいやり取りに、梅子が音を上げて「もういいです」と切り上げる、というのが
よくある二人の会話パターンだが、

先日の、弓子との仲を取り持とうとする梅子から、将来的に結婚したい意思はあるか問われて、
返した松岡の「(結婚)したいんですか僕と?」は、

梅子と一緒にロミジュリ脚本を練り上げていた際に、松岡がふと漏らした本音(楽しい時間は瞬く間に過ぎる→
ああもうこんな時間か、と驚いてみせる)に
「えっ(私といた)この時間が楽しかったってことですか?」というような、梅子からの
(特に何とも意識しない素朴な疑問であるがゆえの)意外に鋭い突っ込みが入り、
「・・・ええ、意外と楽しかったですよ。え、梅子さんは楽しくなかったですか?」と逆に問い返して
梅子から「楽しかったです、意外と(にっこり)」との嬉しい返答を引き出した経緯の再現を
無意識に期待しているようでもあり、
好意をよせる女子に自分の望む言葉を言わせたい尾崎印な男の本音部分、そのシャイならではの
ひねくれ加減にニヤニヤ笑いが止まらなくなる。

梅子は「(松岡との意見の相違に関しては)長期戦でいく」と言い、
松岡は「梅子さんを今後も観察して(知識より大切なものが何かの)答えを出したい」と言った。
お互いに相手に関心ありと宣言しているようなものだが、本人たちは至って無自覚のようだ。
このままいくと周囲が無駄にやきもきする流れになりそうではある。

じれったさが高じた弥生が二人の急接近画策にひと肌脱ぐのか、とは来週の予告を見ての予想。
あの松岡への好意表明はわざとけしかけてんのかと思って。

本日(土曜)放映分では、
病気そのもの以上に患者個人(の病に至った背景や内在する要求)と真摯に向き合う姿勢が
最も必要とされるのが内科、ということで、ハインリッヒこと狭山助教授および松岡から、
君は案外向いているんじゃないかと思いがけない助言をもらい、少々ぎこちなく(←褒められ慣れてないせいで)
照れたように笑っていた梅子だから、医師国家試験に合格しての反応も、周囲がもしや落ちたのかと
ハラハラ気を揉むような茫然自失状態に陥るというのに、非常にリアリティを感じてしまった。
似たような「不思議」に遭遇した過去の事例があって、梅子の家族のような反応を自分もした覚えがあるから。
その時は本当に「何故ストレートに喜ばないのか」不思議だったんだが、今ならあの頃より少しはわかる気がする。

初登場の酒呑みの町医者と竹夫のやり取りの絶妙にもウケた。竹夫のツッコミの間合いの巧さに乗せられて笑ってしまう。
看護婦とのやり取りも然りで、ツッコミやらせたら妙に活き活きしてくる竹夫はやはり東男、なのであった。
(しかもエリート一家の長男とくればボケ苦手は必然か、西の愛嬌とは好対照キャラ、さすが建造の息子、血は争えんw)






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