マグマ(連続ドラマW)第1話

WOWOW発の骨太社会派ドラマ。画面から立ち上がる熱気に煽られ胸躍る。久々の感覚。
ドラマ『ハゲタカ』の原作者(真山仁)ならさもありなん、というところか。

日本の将来を見据え、地道に代替エネルギーとしての地熱発電開発に邁進してきた技術屋と、
311以降、そこに価値を見出しつけ入る経済屋に政治屋が入り乱れての熾烈な攻防戦。

見ないと後悔する良作力作の部類。今一番熱いドラマは万が一にもこれを置いて他にあるまい。
ぐいぐい引っ張る推進力と安定感が半端ない。こういうドラマを待っていた。

録画容量残余の確認のためTVをつけた画面の向こうに、不意に国会中継で代表質問に立つ石破茂が映っていて、
淀みなくあくまで理路整然と、しかしあり余る情熱を言下に迸らせながら自論を進める、愚直なまでの
誠実な姿勢に感銘を受け、その場に立ちすくんだ格好でしばし見入ってしまったんだったが、

本作もまた、その時に石破が繰り返し口にしていた「(議題に上げられた問題の)本質はなにか」を
テーマに掲げる。何度となく仄めかす。
気づかない奴はいないだろってくらい、一度や二度で諦めずその本質論を劇中で繰りだす根性が、
世のため人のためをテーマと掲げる、硬派なエンタメ精神に徹しているといえようか。

エネルギー問題、原発推進か新エネルギー可能性への投資かの将来性をめぐる経済界の動静に翻弄される
外資ファンド勤めの主人公、野上妙子(尾野真千子)。

彼女の直属の上司(袴田吉彦)が起こしたとする会社への裏切りを理由に、問答無用に解雇された
社内プロジェクトのメンバーたち。妙子自身もリストラ覚悟だったが、
統括責任者たるMDの街田(津田寛治)から、ただ一人例外的に手放せない戦力だと認められ、
安堵したもつかの間、買収した「日本地熱発電」の立て直しに尽力するよう言い渡されて
さっそく翌日から大分へと飛ばされる。

それを妙子が、昇進とは名ばかりの「事実上の左遷」と受け止めたことが、
そもそも莫大な金と時間を要する(世界でもまだ実用化に至らないとされる)「高温岩体発電」の
開発自体を打ち切る方針を、彼女が地元社員たちに通達し、混乱と反発を招く結果ともなったのだが、

妙子が進捗状況を電話報告した段階で、初めて街田は、
代替エネルギーとして311以降、急速に期待高まる地熱発電開発を、他社に先駆けて取り込み、
将来的にシェアを独占したい社の心づもりを説明し、
ゆえに目当ての開発を打ち切っては元も子もないと叱りつける。

どうも街田は妙子の「左遷意識」を計算の上で、わざといたぶっているように見える。
でなければよほどの無能でもない限り、こんな効率の悪い上司と部下間の意思疎通の不足がもたらす
対応の初歩的ミスなど犯さないだろう。

そのような経緯も知らず、問答無用で打ち切りを宣告された地元社員たちは、
なんとか新社長の肩書きをもつ妙子に、地熱発電開発の必要性を理解してもらおうと、熱く訴えかける。
曰く、

原子力に代わる代替エネルギーとして、かつてない追い風が吹いているこの機会を逃したら、
もう二度と「地熱」は日の目を見ない、かけがえのない技術が潰されてしまうんです、
と前社長の安藤(谷原章介)は懇願混じりに力説し、

あんたはいま、自分たちが果たすべき役割について考えたことがあるか、
と開発研究所所長の御室(長塚京三)は、あくまで目先の損得にこだわる妙子に、
未来のための理想実現の必要性を、敢然と言い放つ。

なんだか段々妙子が、事業仕分け時に開発費など無駄の極みと目の敵にしてた蓮舫に見えてきたり。

原発推進派の旗頭として、地熱台頭の気運を牽制したい宇田川教授(大杉漣)に、
妙子の親友で自称「二流週刊誌記者」の洋子(釈由美子)がインタビューした際の、
宇田川の原発擁護の強弁ぶりが凄い。

飛行機が事故を起こしても我々は乗り続ける。原発も然りだ。
飛行機も原発現代社会に必要なので手放せない。云々。

なぜそこで釈よ、もとい洋子よ黙る。簡単に丸め込まれる。
有害な核廃棄物は未来永劫地球に残り続け、なおかつ原発稼働でさらに増え続ける。
完全消滅も出来ない極めて重く深刻な負債を、未来に無責任に丸投げしてどうする。
二流週刊誌記者の自称が確かに伊達ではないのはわかった。

で。洋子は民自党議員龍崎(石黒賢)の愛人だったりして。
その龍崎は過去の父絡みの因縁から安藤への復讐に燃えていて、
現在妙子が社長の肩書きで出向している(前社長たる安藤が全力で守ってきた)「日本地熱開発」を
潰したいと考えている。
このありがちな関係設定は、もちろん洋子の妙子への裏切りという形で展開させるためだ。
安藤と龍崎。妙子と洋子。
熾烈な火花を散らすことになりそうなそれぞれの二者対立。

どうやら(会社への裏切り行為は眉唾で)街田の計略に嵌って辞職に追い込まれた気配濃厚な妙子の上司(袴田俊彦)が
今後何をやらかしてくれるかにも、うっすら期待(していいのかな)。

余談。音楽がガンダムUC澤野弘之を思わせたが実際は別の人。
ちょっと曲調被ってて紛らわしかったり。






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