LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜(13)後篇


最終話にきて、急に駆け足で閉じちゃった、
1stへ無事に繋がるよう辻褄合わせには気を配り、あとは(従来ファンの反発かわすように)
無難に締めくくった、そんな印象。

「不二子の足の裏に焼きゴテ」って記憶改竄エピ、どこかの回に挿入されてたっけか。
覚えがないのは単に私の見落としか、それともエピ自体が今回初出だった(つまり後出しジャンケンだった)か。
さてどちらだろう。

しつこくオスカーにこだわるが、では彼の身体のタトゥーは、不二子曰くの「焼きゴテ」だった、でいいのかな。

アルメイダ伯の死亡後も、人体実験の餌食にされてきたアイシャは、なぜか我が身を自由にする道を選ばず、
引き続き(伯爵の手口を継承して)捕獲した他者に対し、自分と同じ境遇を味合わせた上で開放、
その後の人生を被験者たちがどう生き伸びるか、植え付けられたトラウマを克服できるか否かに、
異常な興味を示した、その一人がオスカーだったと。

で、そのオスカーも泣きながら最後は唱和していた、「不二子を称える歌」から察しがつくのは
彼女こそがアイシャの最大の興味をさらった対象だったらしいこと。

みんなが愛してる/みんなが夢見てる/あの子の名前は峰不二子

とかいう手放しの不二子賛歌。
歌詞にはアイシャの「不二子のようになりたくてもなれなかった」憎悪と憧憬が色濃く反映し、
熱っぽい賞賛の裏には激しい執着が、怨念となってべっとり張り付いている感じを受ける。

不二子にはアイシャの記憶が上書きされていたわけだから、
男の言いなりタトゥー女(※)に我が身を投影させて憎んだのは、不二子ではなくアイシャであると、
そしてオスカーが不二子を憎む感情も、元をたどればアイシャであると、
(※不二子が無意識に封印したカタチの「植え付けられた虐待の記憶」を、再び思い出させるための
”道具”として利用された可能性大)

ここまでは本編からだいたい掴める情報だが、さらに説明不足と思われる点を勝手に補足してしまうと
(なんでここまでイチ視聴者、しかもライト層でしかない外野にやらせるんだと、作り手の見立ての甘い
投げっぱな不親切を呪いつつ)

伯爵は被験対象を(彼のおそらく性的嗜好から)「少女」に限定していたが、引き継いだアイシャは、
考えてみればこれも当然といえば当然の話しではあるが、自分のアイデンティティを投影したいと思える対象なら
誰でも良かった、具体的には男のオスカーでも、成人女性の不二子でも、
興味を掻き立てられさえすれば、自分のもう一つの「もしかするとあったかもしれない人生」を生きる
身代わりに仕立てたくなった、ということなんじゃないかと。

さらに言及するなら、オスカーを(女でも良かった、むしろそちらの方が自然だったのを)
あえて男に設定したことと、五エ門にまさかの女装をさせたことは、作り手の意識の底辺で繋がっていて、
それは性別という境界を楽々と飛び越えてしまえる(さしてこだわらずに行き来してしまえる)、
既存の固定観念に縛られない精神の自由さ軽快さのようなものを表現したかった、とも考えられそうだ。

だからそのあたりの説明不足以上に気になったのは、

最終話にきて急に引っ張りだしてきたミネルバ(これは呼び名なのか?)とかいうフクロウ頭の執事が、
実はアイシャの実の母親だったとの種明かしの、絵に描いたような浅くてお粗末な記号キャラ展開
(どんなに突飛であろうとも人の感情としてその行動に納得いく丁寧な積み重ねがあれば問題ないんだが、
まったくその基本の仕込み作業が放棄されている、行き当たりばったりで進行してる印象が拭えないのが問題)だの、

オスカーや五エ門といった男に顕著な「未熟さ」を、まるで当て擦るかのように(そう見えてしまった個人的には)
無理やり女の格好をさせたがる、「自己主張の強い女性視点ならではの嫌な屈折の表明の仕方」だの、

それらを含む使い捨てに近いキャラ(どこぞで見かけた惹句「オスカーとは何だったのか」は言い得て妙)への
愛なき扱いだの、の方かもしれない。

死の直前に「精神的に救われた(不二子によって自由という宝を得た)」アイシャとは対照的に、
一片の救いなく無残に見捨てられたオスカーにしろ、

不二子に姿を借りた、作り手含む「娘」の立場からの鬱憤晴らしに利用された(=母親批判の格好の的となった)
フクロウ頭の執事ことアイシャ母にしろ、

脇キャラは使い捨てと割り切ってるかのような、作り手の愛の絶対的足りなさが
気になるといえばそれが一番気になった。

アイシャとオスカーという好対象キャラの扱いの落差に、男女の差別が見えなくもない微妙さも、また気になる。
オスカーの男設定は、意外とそういったややこしい問題も(作り手が意図せずとも結果的に)含んでしまっていると思うので。












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