宇宙刑事ギャバン再び


先日の記事で、第1〜27話まで収録のディスクがすぐに見当たらず、
HDD保存の第28話以降を先に視聴したと書いたんだったが、
あれからめでたく視聴叶った由、
そこで面白いこと(傾向といっていいのか)に気づいた。

シャリバン視聴時も感じたことではあるが、なんというか、田中秀夫監督が投入されると
みるみる他の監督も軒並み活気づき、作品のクオリティが一、二段引き上がる、ようなのである。

シャリバンギャバンも田中監督以前は正直「そこそこの出来」であるのに、参加後の
漲るやる気というか負けん気というか対抗意識というか(苦笑)は、隠しようもなく
火花飛ぶほどに充実度目覚ましく、本気スイッチ全開で競うように、いや「ように」どころか
「俺こそ一番!」な気合い剥き出しに撮っていらっしゃる。

第11話&12話で田中監督が、目の醒める(!)映像目白押しで戦列に加わった途端、
続く13、14話と強敵サイダブラーとギャバンの対決で前後編とした奥中惇夫監督が、
投げつけられた車のドアを素手で防御する大葉健二に、マジですか!と思わず突っ込んだ素面アクションなど、
脚本の面白さプラス、今までにない熱意こもった絵ズラの工夫で見せてくれたり、

さらに第15,16,17話と三話続けて撮って「しまった」(たぶんこのせいで後々大幅に納期遅れたツケを
田中監督が一人負わされたに違いないと、その後の露骨に精彩を欠いた映像面の、いかにもその場を乗り切ることで
精一杯な余裕のない田中監督の仕事ぶりから想像してしまう)小林義明監督の、本格的カーアクションや
素面アクション中心の(元から小林監督はスーツパートより素面パートに比重を置く傾向がある)
ものすごいやる気と本気入った映像を「どうだ参ったか」ばりに投入してくるしで、

視聴中ずっとニヤニヤ笑いが収まらず。
次から次へ間断なくまた惜しみなく投入される高クオリティ映像を、享受する側はただその贅沢に
うっとり身を預けるのみ。

小林監督が3話連続で撮った直後の2話分を、奥中監督がこれまた費用と手間かけた(ように見える)
映像に仕立てていて、奥中監督ここで降板した形になってるから、最後思い残すことなくやり切りたかったのか、
浜名湖や猪苗代ロケでの派手なバイクスタントやボート上のバトルとか、
木立の中での目を引くスーツアクションとか、面白いこと色々詰め込んでるのに、
忸怩たる胸の内を、田中監督への「後は(俺の代わりに納期遅れの尻拭いを)宜しく頼む」の声を、
どうしても想像してしまい、また想像を裏付ける後の出来具合に複雑な思いもよぎりはしたが。

奥中監督のでは最後となった第19話のスーツアクションが質量ともにお気に入り。
しょっぱなからギャバンスーツが重大な機能不全に陥り、一時撤退を余儀なくされる脚本もいい。
ヒーローのピンチネタは安定の燃え要素。

ざっと通しで視聴して思ったのが、上原正三脚本の多くは、担当する各監督の原案を元に
書かれたのではないかということ。小林監督回に顕著な、監督のシュミに沿いすぎなくらい沿った
内容の偏り具合を見るに、あながち的外れでもないような。

それから前回小林監督回に色気を感じないと述べたのは、言わずもがなだが技術的な巧さを重々
認めた上での発言なので悪しからず。むろん一定レベル以上が前提ではあるが、技術と魅力は
イコールではないので少なくとも私の場合は。
感覚に属することを言葉で説明するのはなかなか難しい。

もう一つしみじみ痛感したことがあって、それは(とりわけスーツの)バトルは横移動だけでは
どう工夫しても物足らず、やはりジャンプや空中技を取り入れて空間を隈なく使うのが、
シーンが美味しくなる決め手ではないかということ。
逆回しによる高所へのジャンプや、空中での回転技やキックやレーザーブレード使い、等々が醸し出す、
頭上の空間を自在に使いまわすことで生じるカタルシスが、最近のSHTにはほとんどないか目立たないのが、
ちょっと残念だったりする。

特撮ヒーローには空/宇宙(そら)を思う存分駆けて/飛んで/舞って欲しい、と願うのは
きっと私だけではないと思いたい。
あの独特の格好良さよ今一度。復活祈願。








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