梅ちゃん先生/ふたつの道(第16週)〜松岡に泣かされるの巻


本日土曜放映分の松岡には全面的にヤラれた。参ったです。

あれやこれや書く材料が豊富で、どこから手を付けたもんやら悩ましい今週のまとめ。
(都合でPart1みたいになってるが、まま細かいことはお気になさらず)


子どもの診察シーンで月曜冒頭が始まり、土曜最後も同シーンで締めくくられる。
坂田が語った「そこにいることの大事」を身を持って実践する梅子を見せる演出GJ。

新キャラのベテラン看護婦八重子は、建造@入院中に代わるお目付け役として配置。
相手を思ってのこととはいえ、患者のプライベートに立ち入るヒロインのお節介を、
行き過ぎた行動だと先頭に立って批判する。

飴と鞭の使い分けは本作のお約束。
梅子にとって坂田が飴なら建造は鞭、に相当する。今週は建造の役回りを八重子がこなす。
甘やかしすぎても厳しすぎても人は健全に育たない。
最終的には飴と鞭をどう配分するかに行き着くわけだが。

今週の柱となるテーマの一つは「他人行儀」という単語に込められた、人との距離のとり方だった。
それは竹夫と静子の、無意識に互いを求めながらも微妙に気持ちがすれ違う、もどかしい関係性に、
また梅子に対する松岡の、自身のポジショニングが掴めず悶々とする苦悩に、それぞれ現れていた。

梅子の開業に影響を与えた人物と山倉から伝え聞いて以来、過剰に坂田を意識する(そして密かな対抗意識を燃やす)
松岡の若さが、酒の力を借りたとはいえ、自分にもそういう人当たりの良さ、会話の巧みさがあったらと
坂田に面と向かって嫉妬と羨望を語らせる。
だがそこは年の功、経験値の差、坂田は「表面上うまくやる」のと「ほんとうに心を通わせる」のはちがうと諭す。
口の巧さは関係ない、大事なのは、梅子さんや患者さんと君が心を通わせられるかどうか、だと。

それへ「未知の領域だ」とおののく松岡にもウケたが、
肝臓癌の末期で自主的に退院してしまった早野という受け持ち患者に、生きる希望に目覚めて
病院に戻ってもらおうと、絶縁状態で現在金沢にいると判明した早野の娘を「自分が連れてくる」と
今までの彼ならありえなかった行動を梅子に告げた時の、すかさず言い添えた
「坂田先生の影響じゃないから」にはたまらず吹き出した。
そう口にしてすぐ、きまり悪そうな顔をしたのにも。
基本的に嘘のつけない質(たち)なのと、おのれの未熟を嫌というほど自覚する若さが言わせる
男としての負けん気と。いいねえ。

早野宅にて、相手の心を動かすツボがさっぱり読めずに、金沢の娘から託されたアルバム写真や
今では子どももいる情報を、後からようやく思い出したように付け加えるKY松岡(このトボけた可笑しさよ)に
対する梅子の容赦ない三段ツッコミに、尾崎脚本の女性観察眼の恐ろしいまでの正確さが生きている件。
そうそう男の気持ちが自分にあると確信した女は、ああいう仕切り屋な言動をしがち。
笑った。笑っちゃまずいか。でもまあ朝ドラヒロインに自称良識派からの反発必至なリアリティを
堂々持ち込む度胸は買う。
梅子が血肉を備えた等身大の人らしく描かれるのは歓迎。
どこにも角の立たない最大公約数的ハリボテ良い子ちゃんでなくて嬉しいぞ。

また厳しいツッコミになるのも、早野の落胆を察するからで、そんな切り札があるなら
早く出してあげて、と気が急くのも理解できる。
早野の「生きる希望」こと娘との繋がりが潰えないよう必死なんだなと。

梅子が誰かを励ます時のもはやパターンと化してきた、例の
「元気になれば(生きていれば)きっといいことがある」、だから病院に戻って下さい、の説得に、
世間知らずのお嬢さんのキレイゴトと馬鹿にした態度を隠そうともせず、やたら意地悪に絡んでくる早野の
おっさん特有のひねたニヒリズム描写と、「特上級に(何とかと紙一重のレベルで)素直」な梅子との
対比の見事さ。
日本の有名観光地の風景写真の本を持参し、早野の「生きる希望」を取り戻させるはずが、
これも毎度の駄目っ子パターンで、いつの間にか立場が逆転、かつて世界航路の船乗りだった早野自らが撮った、
世界の有名観光地の風景写真を見せられ、早野の思惑通り、まんまと素直に驚いたり感動したりの反応を示す梅子。

さらに一杯食わされたと分かった後も、ノブカノこと咲江から手乗り象の話をふられて思わず
「あれ凄いわよね〜」とか満面の笑みで返し、咲江に「まさか!あんなの誰も信じませんよ〜」などと
当然のように否定されて一気にテンションしぼむ、その凝りなさ加減、のんびりしたマイペースっぷりが
一ミリも変わらない、ブレないのが素晴らしい。意外に大物感漂わせる梅子さん、なのである。


今週のテーマ、もう一つは前述の「生きる希望」で、子どもが生きがいだと
梅母こと芳子やミカミ食堂の女将は語り、それが前フリとなって早野と娘の和解に展開するのだったが、
松岡にとっての生きる希望は「医学を進歩させて、病に苦しむ患者を一人でも減らすこと」にあった。

それは娘との和解を経ても結局は病院に戻らず、残された時間を自宅で穏やかに家族と過ごすことを選び、
選んだことを、やっと長年の夢がかなった、これが私の幸せだ、と満足気に語った早野に
医学が「こころ」に敗けた、と大変な衝撃を受けたことで、あらためて胸に刻んだ重い覚悟であり
自らの一生を医学に捧げる誓いとなった。

医学がもっと進んでいれば、救えたのに!
お孫さんの成長を、見せてあげられたのに!

そう言って松岡は真剣に悔しがった。全身から悔しさをこれでもかと発散させて。

だがその決意がなぜ梅子との別れを決意させるに至ってしまうのか。
そこは「偶然居合わせるというカタチで配置された」坂田が、三年だか五年だかのアメリカ留学期間も、
梅子に待つ気があるなら問題なんじゃないのか、と視聴者の多くが抱く疑問を代弁してくれるのだったが、

松岡が別れる理由とした返答を聞いているうち胸がつまり、まったく馬鹿みたいなんだが、
ほろほろと止めどなく泣けてきてしまい。



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電池切れにて続きはまた後から書くことにする。
変則スタイルを照れ隠しの時間稼ぎと読んだ方いい線いってるかも、
無駄に気力吸い取られて朦朧としてきてるし。てことで続く。






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