スーツVS生身について(仮面ライダーエターナルより)





その時の感覚と勢いだけでオチも盛り上がりも愛想もない雑文を、それでも個人の備忘メモということにすれば、たとえうっかり読んだとしてことさら腹は立つまいとする目算。



仮面ライダーW Returns と題したVシネ第二弾(エターナル編)を今頃になって視聴したんだが(あれやこれや手を出す余裕がなくてようやくに)、監督とPによるコメンタリやメイキングのおまけもついていて、なかなか見応えあった。
前作に当る『AtoZ』では風都を混乱と恐怖に陥れた”死に体”5人衆「NEVER」の面々が、本作ではダークヒーローとなり活躍する筋立ては、アクション映画として成立させつつドラマ性にも目配り効かせたとの坂本監督の言を裏付ける、古い固定観念を大胆に刷新する力を有する映像表現とも相まって、大方のファンに好評をもって受け止められたのも尤もなことと頷ける質の高い作品に仕上がっている。
ラストバトル(エターナルVSDrプロスペクトのドーパント態)のワイヤーアクションが坂本監督にしてはめずらしく不自然に見えて物足りなかったのと、一箇所アクションシーンで画面のブレが度を越して激しいのに目が疲れたのを除けば、不満という不満は見当たらないかも。

坂本監督(にアニメ「日常」に出てくるその名も坂本さんなる赤いスカーフ巻いた黒猫を、ついイメージするのは内緒だ)と塚田P(を無意識にツカピーと読み変えているらしくそのたびに柿ピーを連想することも、内緒だ)のコメンタリでのオタク成分多めなw解説も楽しかった。
ただモゴモゴっと早口で過ぎてしまい聞き取れないことも度々で、滑舌はともかく(失敬)もう少しスピード落として喋ってくれとは思った。ということで次回機会がありましたらあんじょう頼むwです。
ところで司会進行役は誰だったのか。最後まで名乗らないから余計もやもやと収まりが悪い。
最初に名乗ると良かったのに。音声に参加してんだからその方が親切ってもん。無駄に混乱の元つくらないようお願いしたいぞ。

コメンタリでスーツアクションが少ないのを「特撮ヒーロー作品の進化形を目指したから(@坂本監督)」的な言い様で片付けられたのが、その意味するところの掴めなさが、喉に引っかかった魚の小骨よろしく気になってはいる。
ちょっと待ってくださいよ、という気持ち。生き死に以前に生身の人間が(実際はスーツ=着ぐるみ、でも表向きは人間がパワーアップのため変身した結果の)怪人=ドーパントと丁丁発止でやりあうとか、基本あり得ないことだし、それでもやりたいならそれなりの理由付けが必要になるんではないか。
例えるならターミネーターの金属男とかスパイダーマンの砂男とかファンタ4のゴム人間とか、パッと見は普通でもいざとなると一種の怪人同様の変態をする、それなら生身とスーツの闘いも十分アリと納得できる。
だが変態技能もないただの生身なのを無視してむちゃくちゃ酷使すれば、もう肉がちぎれ飛ぶわ骨に中途半端に垂れ下がるわ、なゾンビ状態になるしかなかろう。それをいくら怪人(スーツ)とやりあおうが、生身の身体が大したダメージも被らず「人間離れした」脅威の頑強さを誇っては、嘘を本当らしく如何に見せるかの点で、全く説得力を持って迫ってこないのだ。
魅惑されないどころか、子供だましを臆面もなく晒す醜態(としか見えない)に思い切り退いてしまうのだ。

スーツVS生身のアクションにそれなりの説得性をもたせるには、その「現実離れしたファンタジーが成立するに足る」設定ないし映像を用意してくれないと、中味がシリアスであればあるだけ非論理的発想を「素」で受け入れるのは作り手が軽視するほど容易ではない。
生身のもつリアリティとスーツのファンタジー属性はそのままでは相性が良くない。それを無理やり通せば「所詮は子どもだまし」に甘んじる態度と結果的には同じことになる。大人が気持ちよく騙されるには、あの絵面では「生身のもつリアリティが剥き出しになりすぎ」なので「所詮は子どもだまし」という言い訳とのセットでなければ、とても受け入れ難いのだ結局のところ。
でもそれを作り手にとって好都合と解釈してしまっては駄目だと思うのだな。それが特撮ジャンル特有の内輪向けの認識コードであり、暗黙の了解事項だってことに気づいてくれないと困るのだ本気で。

なんかパワーの基準、段階設定が非常にいい加減な気がすごくするんだが、気のせいか。
ライダーやゲスト怪人などと(←ザコ戦闘員ならまだしも)生身の人間との力が拮抗しては、子どもにしても夢が壊れるというか、そこは格の違いを見せつけて一瞬で、しかもすごい威力でぶっ飛ばしてくんないとワクワクしない、みたいなのがあるんじゃないか。
子どもは非力な分、大きいとか強いとかの物理的力に敏感ではないかと思うがどうだろう。


もう一つコメンタリで胸高なったのが、NEVERの五人衆は戦隊シリーズに匹敵するチームワーク、とかいうくだり。
そこから妄想が一気に膨らみ始め、じゃあいっそアダルト戦隊作れば楽しいんじゃないのか、ほら、過日ゴーカイにゲスト出演した結城凱こと若松俊秀とか、大原丈こと西村和彦とかレジェンド戦士務めた二枚目陣をもれなく揃えてだね、ピンクに該当する女子には『牙狼』邪美役ん時の佐藤康恵タイプとか良くないか(誰に同意を求めている)、もう30代以上でまとめてくれていいよ、レジェンド戦隊ってことで。ううむマジで観てみたいぞ超ドリーム企画。
むろん前述の若松凱(勝手に合成しないように)の変身態がブラックコンドル繋がりで大藤直樹SAなのは言うまでもなし。
ところで我が贔屓の直たん(←臆面もなくアイドル呼び)がゴーカイはブラックコンドル役で打ち止めだったとしたら寂しいことよ、もう一度だけ気が変わって(あるいは誰かが再び強引に引っ張ってくるとかして)ご出演いただくわけにはいかんのであろうか、などと未練たらたら引きずる私だ。(美しい夢幻は遠くから眺めてこそ、とばかり、あくまで「映像限定の欲望」なのがさらに厄介)


※追記 2011/10/06 17:50

基本的にアメリカのヒーローは「コスチューム」だから生身と地続きの感覚があるのかも(坂本監督の生身へのこだわりも要するに実力は変わんないじゃん的なとこからきてる?)。
対して日本のヒーローは殆どが「変身」してああなるわけで、地続きじゃない。一気にトンデモない力を獲得するファンタジーな世界へ突入してしまう。
その辺の違いは踏まえるべきではとふと思い至ったのでメモ。

※追記2 2011/10/07 05:55

不満一つ思い出し。タイムリミット過ぎて以降のレイカの粘りがあまりに長すぎて(時間的に)ぜんぜん危機的身体状況に見えない点。
せめてヤク切れ状態(とは違うが反応的には似たようなもん)ん時に皮膚に浮き上がるウロコ状のシミみたいな描写を、もっと頻繁に入れるべきだった、坂本監督には可愛い子は可愛いいまま撮りたい、崩したくない深層心理があるのかも。
限界点ギリギリで闘うレイカをホラーまがいのキモカッコイイ系で撮る方が面白いしエロいと思う私は坂本監督よかノーマル度低いってことか、いやいや監督が健康的すぎるという見方も(ここは食い下がりたい)。