父と息子の絆という王道/フォーゼ(8)&ザ・ケープ






どう柔らかく崩そうとも根っこの部分は硬派な(特撮)ヒーローものの多くに、通奏低音の如く流れる定番テーマがコレ。

日曜はSHTの後に『ザ・ケープ』字幕版を毎週録画して観てるんだが、リアリティ重視の作風が吉と出るか凶と出るかは置くとして、初回から「父と息子」の鉄板テーマを全面に押し立ててくる、古風ともいえる倫理感覚にヒーローものの原点を見る思いがし、感触は今のところ悪くない。
ただヒーローそのもの(見栄え&アクションどちらも)に華やかさが絶望的に乏しいのが難点かも。

大実業家フレミングこと犯罪王チェスの身代わりで負わされた冤罪を晴らすその日まで、ひっそりと陰から妻と息子を見守るしかない(世間からは死亡した凶悪なテロリストと見られているので)主人公の元警官ヴィンス・ファラデーが、私利私欲によりパームシティの独裁を目論むチェスの仕掛ける悪事から街を守るべく、息子が愛読するアメコミヒーロー「ザ・ケープ」に扮し活躍する、というのがストーリーの骨子。
突如として働き手を失った妻は冤罪による風評ダメージから職探しに苦労し、息子はひどい虐めを受け転校する羽目になったりと(で転校先でも素性はすでに知れ渡っていて、初日早速に虐めが発生、父への侮辱が許せず相手に殴りかかり、学校から母親が呼び出しを受けるとか)、リアリティ追求の結果のやりきれない暗さをも内包する展開に、どこか前々回までの『フォーゼ』の中島かずき脚本に通じるリアルとファンタジーの線引きをどこに置くか、どこまでキレイゴトの通じないリアルに鋭く深く切り込めるか、の問題と限界を見るようではある。
猛特訓をこなして人並み以上のチカラと技を獲得する努力型ヒーローなのも、リアリティ重視の姿勢が窺えて興味深い。
さらにヒーローのサポート役を買って出る美少女オーウェルには、どこかフォーゼの学園クィーン・美羽に似た雰囲気を感じる。(三話目で気づいたヒト)。

横道に逸れたが、この父と息子の王道テーマを先週今週の『フォーゼ』が取り扱った目論見が、それこそ特撮ヒーローの原点、基点を確認する意味で真っ当な王道を行っている、また(見掛けは相当な変化球であれ)堂々行くつもりである、との決意表明であるのなら、頼もしい限り。
この希望的観測が、単なる買い被りが見せた竜頭蛇尾マボロシなんぞに終わらぬことを願いつつ、軽く本編感想など。


仮面ライダーフォーゼ第8話/鉄・騎・連・携
監督:柴崎貴行、脚本:三条陸


◇隼と父との関係性を端的に象徴する小道具に、父が隼に贈った彫像を設定し、序盤での父とのケータイ通じてのやり取りや校庭をローラーで整地する際などで「隼が彫像を気にする」ショットと、終盤での「隼が彫像を打ち壊す」シーンに、二人の関係変化を託して描いた手堅い三条脚本。Wの実績も伊達じゃないということか。
安定感が半端ない。シリアスとコメディがごっちゃになった(あえてライトに描く)感じが中島脚本との違いか。その違いが面白い。

◇中島回での、ゾディアーツ化したその後が気になってた一人である三浦くんネタ拾ってくれて、ナイスフォロー。
弦太朗「三浦はまだ病院なんだろ、謝ったのか」、隼「俺のせいじゃない!」、叫ぶや弦太朗をボカッと一発殴る、取っ組み合い始まる、の流れを挿入することで視聴者の隼へのわだかまりを軽減、または消す効果があると思われ。
弦ちゃんに視聴者のもやもやを代弁させ、隼には釈明の機会を与えることで、レギュラーキャラの過去の過ちを作リ手側の手前勝手なご都合主義で隠蔽するつもりはない、との意思表示にも受け取れる点でポイント高し。

打つべき布石は打つべき時に打っておかないと、後々キャラに対する好感度の差となって出てくるやもしれん。別に本人に直接謝罪したわけじゃないが、せめて罪悪感を露呈させた分だけ、いいとこなしだったJKより情状酌量の余地があるように感じる、またそれが人情でもある。中途半端に放置された感がしないでもない気の毒なJKにも、早急に脚本家の愛の手を!

◇前半で美羽をパワーダイザーに搭乗させて、いかにハードな操縦かを前フリすることで、後半に隼が搭乗した時との動きの明らかな違いを見せたい狙いに加え、隼が美羽の意外な一面に驚き、これまでつき合っていたのに彼女について何も知らない自分に気づくきっかけとなる、大事なイベントでもある。
我が身を顧みずの献身行為にしろ、その精神に触れて(しかもあの美羽が!という畏敬の念も手伝って)隼が変わる展開にしろ、闘い終わって弦太朗の投げた「陰の名誉は俺達だけの勲章」との言を、しっかりキャッチする隼の心の成長ぶりにしろ、ことごとく特撮ヒーローものの王道を行っていると感じるし、原点に照準あわせて王道ネタ詰め込んだ徹底ぶりに、三条脚本の気概を見るようでもある。

◇隼による、視聴者の涙絞ってもおかしくない感動セリフを並べるくだりに、だがひくひくと笑いの痙攣が走るのは、ひとえにその福笑いモドキな表情のせいに尽きる。コントじゃないんだから(いやコントなのか)。
聞き手のうち、ひとり弦太朗だけが案の定ほだされ、ボロ泣きする展開もベタなら、隼と弦ちゃんそれで一気に意気投合し、うるうる二人の世界で盛り上がるところに、取ってつけたように流れる劇伴も、感動製造マシーンかと突っ込みたくなるベタさ加減で押してくる。
ここまでくるとあるいは作り手は、松竹新喜劇的な泣き笑いを狙ったのかもしれない、とも(図星だったり)。
さらに間抜けな二人に、話題が父親絡みだといまいち弱い賢吾が、控えめながらも真面目に共感を示すのが重要なわけで、弦ちゃんの独断というわけではない、賢吾も加えた男子三人の気持ちがひとつになるイベントを経たことが、隼のライダー部入部が今までよりスムースに感じられる、大きな要因じゃないかと思われ。

◇佐竹先生とその息子(今回のゲストゾディアーツの子)のサイドエピ追加のダメ押しで、父と息子テーマに厚みをもたせるテク、オチのつけ方、など特に奇抜なアイディアというわけではない、堅実かつ基本に忠実な脚本術に好感。
フォーゼにお初登板のいわば挨拶がわりに王道を意識したっていうのも、或いはあるのやもしれず。

◇今回の宇宙キター!!は、右腕ロケットの噴射で低空飛行、猛スピードでゲストゾディアーツの背に追いつき、背後からどかっと一撃(ロケットで)、な先制攻撃と一体化で見せてましたな、それも又良し。