由紀さおりヒットの考察(『ニュース深読み』より)

今朝のNHK『週間ニュース深読み』小野文惠アナが司会進行役を務める番組)にて、世界が注目する由紀さおり初音ミクからその人気の要因を考察するコーナーが、なかなか興味深い内容だったので備忘メモ。

人気の理由ベスト3と称して、かつてのTBSのザ・ベストテン方式(順位確定までタイトルがパラパラ回転する仕組み)を真似た悪ノリぶりは、最近のNHKに顕著な傾向として如何なものかという気がしなくもないが、それはさておき、

由紀さおりの歌が世界的ヒットとなり得た理由を、作曲家の宮川彬良は、最近のリズムやフレーズ主体の楽曲にはない、口ずさみやすく明確で懐かしいメロディーにあるとし、
長調が主流のアメリカに、ノスタルジックかつセンチメンタルな昭和歌謡短調が受け入れられたのは、9.11から3.11へと連なる線上の影響を無視できないとした。

また音楽評論家の富澤一誠は、当時(昭和44年)と今(平成23年時)との社会背景(閉塞感や不安感)の共通性に注目、
さらに日本音響研究所所長の鈴木松美は、そのものズバリ日本語に、世界ヒットの要因を見る。

曰く、日本語と英語の発音の違いは、(突き詰めれば)摩擦音の有無にあるのだと。
それへ加え、歌い手が美しい発音を大事にするか否かも大いに影響するらしく、日本語なら無差別に該当する(ヒットの要因に成り得る)、というわけではないと。

それを受け、スタジオからは、日本語を大事に扱う童謡を歌い継いできた由紀さおりの経歴が、今回の現象に有利に働いたとする見方も出た。

常時、周波数の値が一万五千ヘルツ以下で推移する、由紀の落ち着いた日本語の歌声と比較対照するカタチで、摩擦音を特徴とする英語(歌)の代表としてレディ・ガガの、それもわざわざバラード曲を選んだところ、
後者の周波数にはところどころ二万ヘルツを超える箇所があり、さらに現実の音からよく似た周波数を探すと、レディ・ガガが飛行機の離陸音に、由紀さおりが除夜の鐘に、それぞれ相当するのだそうだ。

飛行機の離陸音と除夜の鐘か。
なるほど後者の方が聴いていて落ち着く(癒される)音には違いない。

スタジオゲストには、TRONで名を馳せた(私もこの件でその名と業績を知り得た口であるところの)坂村健氏の姿もあり。
「情報のオープン化」を主張する、以前と変わりなき高き志とその熱心な語り口を、喜ばしく拝聴する。

余談だが、過日チラ見した歌謡ショー的な番組(たぶんNHKBSプレミアム辺りかと思うが)のゲストが由紀さおりだった回にて、司会の武田鉄矢が考えるヒットの要因に、語尾が必ず母音で終わる日本語の特色、を挙げたのも、なかなかユニークな視点のように思った。

果たして日本語が、日本人以外の耳にどのような「音の響き」として届いているのか。
客観視の難しい立場としては、興味の尽きない点ではある。

番組中一番驚いたのは、小野アナが初音ミクをまったく知らなかった(この番組が初耳だった)らしいこと。
街頭インタビューの子たちじゃないが、ヤラセかと一瞬戸惑うも、小野アナの経歴を踏まえた後では(どんな人なのかと初めてチェックしてみた)、十分あり得る話に思えてくるから不思議だ。
小野アナが気になり(チャーミングな持ち味に惹かれて)来週も観たくなってくる。
やはりこれは制作スタッフの仕掛けた戦略なのかも。