坂元裕二の復讐モティーフ/松岡敏夫はいつ殻を破るのか/オーレン最終話 


◇毎週視聴しているNHK連ドラ2つ『負けて、勝つ〜戦後を創った男・吉田茂』と『チェイス国税査察官〜』が
同じく坂元裕二脚本なのを、素直にゴールデンタイム枠(とは午後8〜10時くらいの見当で言うのだが)での
二本掛け持ち技に驚嘆していたんだったが、何のことはない、チェイスは2010度作品の再放映らしい、
再放映らしからぬ時間帯だったゆえ過去作の可能性に思い至らなかった。

チェイスは復讐がテーマだが、携わったドラマの経歴を見るに、その後にも復讐モティーフの作品が続いている。
正確には復讐という感情に虚しく踊らされる人間の哀しさ愚かしさ、負の感情に蝕まれ飲み込まれ堕ちる
虚しさ報われなさを、観る者につきつけてくる、深く考えさせるような真面目な作品を世に出している印象をもった。
(2011の『それでも、生きていく』は未見ながら、復讐の生き地獄から如何に魂は解放されるかの物語ではないかと想像)

それを加害と被害の関係性で捉えるなら、現在放映中の新作『負けて、勝つ』も復讐モティーフの範疇に
収まるのかもしれない。従来まかり通ってきた「目には目を」的思考の限界の提示とその踏み越え方、
跳躍の仕方を国レベルの舵取りのスケールで描かれている。
先週放映回だったかで吉田茂を演じる渡辺謙が忽然と言い放った「恥がどうした、メンツがどうした、
国が復興するために頭の一つ二つ下げて、なにが恥ずかしい!」の決め台詞の真っ当さに胸のすく思い。


◇朝ドラ『梅ちゃん先生』に欠かせない名物男の松岡敏夫が三年ぶりの帰国を果たしたはいいが、
案に相違して梅子との再会シーンもあっさり淡白のまま終わり、このまま一緒にいると引きずられて
自分らしく居られない、などという理由から松岡に一方的に振られたカタチの梅子の方は、ノブと結婚して
一応松岡との過去に区切りをつけた(結婚という形式で一線を引いて決別した)からまだいいとして、
松岡の不甲斐なさはどうしたことか、最終話まであのまま「まるで変化なし」なら人物としての肩すかし感が
否めないがと、その点に関しては気になっている。
再会した際に梅子に言った「別れて正解だった」が負け惜しみに終わらぬよう祈る。現状のままでは
駄目な奴、情けない奴、止まりになってしまう。どうかがっかりさせないでくれよ敏夫よ。
(梅ちゃん〜に関しては最終話放映後に簡単に振り返って総括してみたい気持ちはある、ノブとの結婚以降
若干視聴テンションが落ちたとはいえ、作品への好感度にさしたる影響は及ばなかったし、さらさらと
一定の調子で流れゆくライトな下町人情漫画的世界観も嫌いじゃなかった)


◇オーレン最終話のこと。ここに至って初めて「機械も愛する心を持っていた」ことに驚くオーレンジャー達だが、
その敵方のマシン帝国パラノイアの皇帝ブルドントとマルチーワの新婚カップルから、ラブラブなんとかいう
技の名称を大っぴらに叫んでの攻撃をしつこく食らっていたのに、肝心の彼らのラブラブ度に気づいてなかった
鈍感さはどうかと思うのだし、また逆にブル&マル側も「人間には愛なんてものがあるから駄目なんだ」と
嘲笑する割には、自分らの赤子への溺愛をこれでもかと見せつけ浮かれているのも、脚本の皮肉というよりは
ツッコミ必至の朴訥さな気がするんだが、スケールのデカいハードな世界観もさりながら、生命の尊厳に
差別なし、というテーマのブレなさが徹底しててそこが素晴らしいなと思う。
コピー人間ならぬ何人ものドリンが登場するシーンにエヴァを想起し、確認したら同じ制作年だったのは、
単なる偶然か、共有する時代の空気感みたいなものか、それとも何か元ネタでもあるのやら。




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