平清盛/兎丸無念、雑感。

久々の大河感想。

第三部に突入して以降の抜群の安定感には目を見張るものがあると以前にtweetもし、
タイトルロールに相応しい主役の活躍を今度こそと、
映像的にも展開的にも実に見栄えのする後白河VS清盛の丁々発止の対決を
心より楽しんでもいたんだったが、

やはりと言おうか、清盛に常態的につきまとう影の薄さは、
彼への感情移入をさせない脚本の書き方によるところ大であり、
その欠落をナレ担当の頼朝が埋める形で、いつしか源氏へ肩入れしたくなる雰囲気が形成されるのも
脚本の見込みの想定内だろうとは思うのだが、

本来なら晴れがましい大河の主役を、徹底して狂言回し的役割に終始させることで、
不安定に宙吊りとなる視聴者の感情移入したい欲求を脇キャラに向かわせる、というような手法はしかし

次世代の平家棟梁たる重盛の下した政治的決断に、叔父の時忠を用いて真っ向否定するケチのつけ方をして
無駄に自信喪失の憂き目に遭わせた時にも感じたが、
今回の兎丸の一件に於いても、年月をかけて信頼関係を築いてきた貴重な友の生命の犠牲が
結果的に無意味としかならず(最後に一年かけて完成したとの笑えないオチがつく)、
将来を長いスパンで見通しているとはとても信じがたい、清盛の采配のマズさが
悪目立ちするばかりな気もしないでもない。

大輪田の泊の改修工事を、当初予定の半分の工期の三ヶ月で完成させろと無理強いするなら、
その分、単純作業を受け持つ人夫を追加募集で増員するとか、いくつか具体的な手は打てるはずを、
(貧しい庶民を積極雇用することで平家に対する不平不満も抑えられれば一石二鳥だろうに)
現場が「もう限界」と悲鳴を上げてるのに耳を貸さない清盛の頑迷さがどこからくるのか、
無理強いするほど要求が本気であるなら尚の事、重盛の件含めて将たる立場の者としてはあり得ない
初歩的な人心掌握のつまずきは一体と、わけがわからなくなる。

今回の件で、兎丸の一派にも時忠にも自身の采配への不満を抱かせて、でもその分何か得することがあったかというと
別にないとか、この体たらくでは将たるものの器ですらないし、宋との貿易による国富論とも矛盾する愚かしさで、
せっかく持ち直してきた清盛のイメージが再びガタ落ちしかねない(というか現在進行形かも)。

なんだか清盛という人が、無闇に尊大ぶった下らないナルシシズムに陥ってしまっているようにしか見えず、
なのに本人は悲劇の主人公たる自分に酔っ払い、やたら悲壮な決意を見せつけるのに
目も当てられない痛々しさを感じてしまうのだが、どうしたものかな、

今回も重盛の時も、最悪の結果を招いたのは、
平家が天下を取る野心云々以前の、清盛自身の将たる器にあるまじきしょうもない落ち度なのが、
悲しいというか厳しいというか、視聴が辛くなるというか。
今ひとつ強烈な魅力に欠ける描かれ方を未だにされ続ける清盛には同情を禁じ得ない。
いっそ悪に描かれる方が、無能に描かれるより全然いいと思うのだし。

とはいえ、遮那王神木隆之介)と弁慶(青木崇高)の五条大橋での出会いのシーンには、
息もピッタリで何より爽やかな二人の熱演に胸が躍ったし、
兎丸に「お前のやってることは盗賊同然!」と罵られた清盛(松山ケンイチ)が、
ぐっと憤怒と苦悩を内側にたぎらせる中に、
奇妙にも見捨てられた子供のような頼りなげな風情が混じる、繊細かつ複雑な表情を浮かべた、
あの真正面からのアップショットは最高だった。
青木弁慶の生命力みなぎるキラキラの目ん玉と甲乙つけがたしだった。




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